Opinion

地震科学探査機構(JESEA)の地震予測方法について―過去の的中事例―

JESEAで行っている地震予測は様々な手法を用いて行われています。
まずは最新の「ピンポイント予測」で地震予測が的中した例をご紹介します。

2021年3月20日:宮城県沖地震(M6.9、震度5強)

2021年3月20日に発生した宮城県沖地震(マグニチュード6.9、最大震度5強)では、地震発生の約1ヶ月前の2021年2月22日に「MEGA地震予測」の号外を発行し、衛星画像をはじめとした複数のデータに異常が現れたことをお伝えしていました。

地震の規模を表すマグニチュードは予想よりもやや大きくM6.9となりましたが、発生時期・発生場所については予測通りの結果と言えます。

2021年5月1日:宮城県沖地震(M6.8、震度5強)

2021年5月1日に発生した地震では、2021年4月21日号「MEGA地震予測」にて複数のデータに異常が見られたとお伝えしていました。地震発生の約10日前に予測を発信できた例です。

従来の「地殻変動を用いた予測」と「ピンポイント予測」とは異なるポイントがいくつかあります。

MEGA地震予測(地殻変動の異常から予測)
  • 予測場所:最大震度の場所
  • 予測時期:3ヶ月~6ヶ月以内
  • 予測規模:震度5弱以上
ピンポイント予測
  • 予測場所:震源地
  • 予測時期:約1か月以内
  • 予測規模:マグニチュード6クラス以上

ピンポイント予測は震度ではなくマグニチュードで予測しているため、震源が深い位置であったり、震源が陸から遠く離れた海域である場合はマグニチュードが大きくても震度は小さくなることがあります。

しかし、マグニチュードが小さい地震であっても、震源が地表近くであれば震度は大きくなります。

一般的にはマグニチュードが大きければ震度(つまり地震被害の度合い)も大きくなりますので、マグニチュードの大きな地震を「ピンポイント予測」での予測対象としています。

さて、下記では、過去に「地殻変動の異常」を解析し地震予測を行い的中した事例を3つ、ご紹介します。

2018年5月12日/25日:長野県北部地震

上記は、2018年5月に発生した長野県北部地震の検証結果です。
MEGA地震予測で配信している「週間高さ変動」をもとに分析したものです。

右の図は、地震発生の3ヵ月前、一斉に4cm以上高さが変動した地点を示したものです。図の黄色い点が、一週間で4cm以上動いた地点です。通常、日本の地表は常に1cm前後動いています。

この動きが4cm以上になると「異常な動き」と判断します。図の中で、赤い点は6cm以上動いておりかなりの異常値といえます。

しかもその際、多数の異常な高さ変動が南西・北東とふたつのグループに分かれて観測されました。(右上図の黄色い点線枠です)

この観測結果をもとにMEGA地震予測で警告したところ、5月12日に、南西側で地震が発生。約2週間後の25日にも、北東側で地震が発生しました。

5月12日に起きた地震の震度分布が左の図です。右の図(一斉高さ変動を観測した図)と比較すると地震発生の3か月前に、一斉に高さが4cm以上変動した地点と震度の分布図が、ほぼ同じ範囲を示していることがわかります。

 

2018年7月7日:千葉県東方沖地震(M6.0、震度5弱)

これは、MEGA地震予測で配信している「水平ベクトル図」の分析で異常を検知した事例です。

上記の図の右側は、地震発生前に観測された「水平方向の変動」です。
2018年7月7日に発生した千葉県東方沖地震では、地震発生前に房総地帯で「水平方向の変動」がまとまって現れていました。

一方、伊豆諸島は、房総地帯とは違った方向に動いています。
(右側の図の左下で、矢印が右上を向いている部分)

ある地点が一斉に同じ方向に動き、またある地点では別の方向に動いている。つまり、動きが交錯している状態です。交錯している場所の中間地点が危ない、と分析し、6月27日のMEGA地震予測で「今までに見られなかった一斉異常変動であり、危険な状態」と警告を発信しました。

結果、約10日後に地震が発生したため、この予測は的中していたといえます。

発生した地震の震度図が左側の図です。水平方向に一斉に変動した地点と、実際に揺れが発生した地点とがほぼ一致しています。

2018年9月6日:北海道胆振東部地震(M6.7、震度7)

図の中で、右側のものが隆起沈降図です。
緑色・黄色は隆起を示しています。地震発生6か月前には、胆振地方は隆起していたことがわかります。襟裳岬がより隆起していますね。

ただし、地震発生の3ヵ月前から、苫小牧、門別から札幌にかけて地面が沈降しはじめました。(図では青い色が沈降を示しています)

地震直前の9月5日にMEGA地震予測で配信した隆起・沈降図では、上記の図にあるように苫小牧から札幌に向けてはっきりと青色の沈降帯が現れていました。実際に発生した地震の震度分布図が左側の図です。

沈降し始めた地帯を中心に大きな揺れが発生していることがわかります。この予測も的中していたといえます。

JESEAの地震予測法と的中事例のまとめ

 

以前の投稿で、JESEAが地殻変動の異常を解析して行う地震予測には、主として3つの解析方法があるとお伝えしました。

方法1

1週間に4cm以上の週間高さ変動が複数点まとまって現れた場合、その周辺近くに震度5弱以上の地震が起きる。

方法2

4週間の単位で水平方向の変動が突然まとまって現れた場合その周辺、あるいは水平変動の向きが面的に異なる方向に現れた場合その境目に震度5弱以上の地震が起きる。

方法3

ある地域が一定の期間連続して沈降傾向を示した場合、あるいは沈降の後で隆起に転じた場合、その周辺に震度5弱以上の地震が起きる可能性がある。

今回紹介した3つの地震は、それぞれ以下の方法で異常を検知し、予測を発信しました。

長野県北部地震  :方法①

千葉県東方沖地震 :方法②

北海道胆振東部地震:方法③

 

JESEAでは複雑な自然現象である地震の前兆を検知するため、上記以外にも新たな予測方法を取り入れ複数の手段を利用して地震の前兆を観測し、予測を発信しています。

今回の内容はここまでです。

次回からは、地震発生前に起こる様々な前兆現象とその観測についてご紹介する予定です。

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