Opinion

地震科学探査機構(JESEA)の地震予測方法について―捕捉率とミニプレート理論-

JESEAの地震捕捉率

地震の捕捉率について、異常が確認されてから震度5弱以上の地震が発生するまでの期間により、以下の三種類に分類しています。

※捕捉率とは、「地震の前兆を捕捉できたかどうか」を表す数値です。

  • 3ヶ月以内:捕捉
  • 4〜6ヶ月以内:ほぼ捕捉
  • 地震が起きなかった:不補足

2013年~2019年の7年間で捕捉率は約55%、ほぼ捕捉を入れると合計で約87%となります。

JESEAのミニプレート理論とは?

JESEAは、2016年の4月に起きた熊本地震の水平方向の分析から、ある事実を突き止めました。それは、熊本地震で九州は面のかたまり毎に同じ方向に動いたということ。そこから、日本列島が大きな面(これをミニプレートと名付けました)で動いているのではないかと仮定し、1300点のXYZの時系列データを分析しました。その結果、日本列島は熊本地震で現れた九州の動きと同じように面のかたまりで動いていることがわかりました。そして、その動きと地震とは相関があることも確かめました。そのかたまりを8つに分類した場合が一番地震との相関が高いということもわかりました。

こうして、8分類のミニプレート分類図が完成したのです。

過去の震度5以上の地震とミニプレート分類図との相関を解析したところ、内陸地震の7割はミニプレートの境界で起きていることを検証しました。ミニプレート理論とは、「断層(線)が動くから地震が起きる」という従来の考え方ではなく、「ミニプレート(面)が動くから地震が起きる」という新しい発想の理論です。

 

これは定量的、動的、再現性のある地殻変動を表す図であり、従来の地質図より、地震発生との相関が高い分類図と言えます(※JESEAはこの方法で特許を取得しています)

 

ミニプレート図の特徴について

①定量的であること

従来の地質図が「定性的」であるのに比べて、ミニプレート図は「定量的」です。

地質図とはその名の通り、「地質」に着目して作られています。地表付近(表土)について、「どんな種類の石があるか」「何が積み重なってできた地層か」「地層がどのように分布しているか」といった「数値では表せない性質」に着目したものです。

そのため、調査当時に選択された地質調査の方法や、地質調査技術者のスキル・解釈によって図の表現や内容が異なってきます。

これは「定性的」な考え方です。

一方で、ミニプレート図は「定量的」です。ミニプレート図が元にしているのは前回の記事で解説した測位衛星(地表観測用の人工衛星)の電子基準点の変動データです。

全国に設置された1300点ある基準点の、日々の変動データから作成されたものですので数値(データ)に基づいている「定量的」なものといえます。

定量的な図である、ということは、客観的に認識できるためわかりやすく、科学的な分析や再現も、より正確に行うことができます。

 

②動的であること

ミニプレート図の特徴として「動的である」という点があります。
動的とはどういうことでしょうか?

①で解説した通り、ミニプレート図は測位衛星の電子基準点の変動データをもとに作成されています。

電子基準点のデータは「XYZ」の座標データですので、ある期間に、特定の地点が高さ方向および水平方向にどれほど変動した(動いた)のか? というデータを扱うことができます。

従来の地質図が「図を作った時点で、この地帯にはこういう物質が多く含まれていた」というデータしか

示すことができないのに対し、ミニプレート図は「XXXX年X月X日から現在までの間に、この地点はこのくらい動いている」という変化を観察することが可能なのです。

常に変動するデータを扱えるため、「2年前と現在のミニプレートを比較」したり変動の様子を動画にまとめることもできます。

つまりミニプレート図は、地質に関係なく「電子基準点がどれだけ動いたか」という三次元的な変動のみを考慮して作られているのです。

「図を作成した時点」の情報しかわからない、従来の地質図や地体構造図よりも「地殻変動=地震の前兆」の捕捉に特化した図といえます。

 

③再現性があること

従来の地質図の内容については作成時に「作成者の経験や、当時の技術・方法」に依存する部分が多いため、いつどこで誰が作ったかによって内容が変わってしまうことがあります。

一方で、ミニプレート図は電子基準点のデータとソフトさえあれば、誰でも同じ結果を得られます。

※JESEAのミニプレート図はすべて一般に公開されているフリーソフトを使用して作成しています。

つまり、再現性が非常に高い手法なのです。再現性が高いことは重要です。

「難しすぎて、特定の人しか使うことができない」ものや「使う人のスキルによって得られる結果が異なってしまう」という技術は広く普及しづらく、細かな改善を繰り返すことが困難です。

 

JESEAの課題と解決方法

JESEAの地震予測は「30年間にXX%の確率で起きる」という確率統計学に基づいた長期地震予測よりはるかに現実的なものであるとはいえ、時間的精度(いつ起きるか)に関しては課題が残っていました。そのため、地殻変動の異常だけではなく、複数の地震予測方法をとりいえることで精度の高い地震予測ができるようになりました。

それが「ピンポイント地震予測」です。2021年7月よりスタートしました。

「ピンポイント地震予測」はJESEAのアプリ「MEGA地震予測」内で実証実験を2020年11月から2021年6月まで行いました。その結果8例予測し6例的中(的中率75%)という結果となっています。

 

今回の内容はここまでです。

JESEAの地震予測の捕捉率と、ミニプレート理論についてご紹介しました。

次回は、JESEAの地震予測が実際に的中した事例についてご紹介する予定です。

 

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