執筆:村井俊治、JESEA取締役会長、東京大学名誉教授
※本稿は「MEGA地震予測」のコラムにて配信中の「村井俊治の部屋~どこかで大地震が起きる前兆とは?」をブログ用に再編したものです。
第15報:太陽活動の異変が地震を起こす~その3
配信:2022.10.19
太陽活動の異変が地震を誘発すると言われても理解できないでしょうから、 具体的にどのような太陽と地球の間で地震を起こす関係があったかを説明します。
日本全国約1300点の電子基準点のGPSのXYZデータの日変動分析を通じて、 地球は毎日5mmから1cm程度刻々と変動することを知りました。場所によっては5cm以上も変動します。
一方大陸はプレートの塊単位で漂流しています。宇宙測量の結果ハワイと日本は年間に8cmずつ近づいています。 そしてプレートの境界は、一種のひび割れ状態で脆弱になっていて、地震と火山が多発しています。 プレートは1枚岩でなく、ミニプレートの多数の塊で形成されています。 ですからプレートあるいはミニプレートの境界も常に変動していることになります。 つまり脆弱になっている境界も常に変動します。丁度流氷が小さな塊で常に動いて隙間ができたりくっついたりしているのと同じです。
地球は多種多様な外力(気温、気圧、降雨、積雪、潮位などのほかに自転と公転による日夜変化、 季節変化や遠心力など)により刻々と変動し、特にプレート境界またはミニプレート境界近辺に割れ目や亀裂ができやすいです。
太陽は地球の光と熱の恵みを与えてくれるありがたい存在で古代から神様扱いをしてきました。 太陽の巨大なエネルギーは水素原子の核融合によって生まれています。太陽黒点が増えると太陽活動は活発になります。 黒点の数は常に変動しており、地球の方向に向いている黒点は多い時で100点以上ですが少ない時は10点以下になります。 黒点の最大と最小の年合計は約11年周期で変動しています。 核融合により生まれた秒速300kmから700kmにもなる太陽風が宇宙空間に放射され、 地球にも絶大な放射線や磁力線などが渦巻き状に吹き付けています。 幸いに地球には大気があるために人体に被害がおよぶX線より短い電磁波は地表には届きません。
太陽の核融合が激しい時は、太陽風の密度や速度、磁場強度、エレクトロンやプロトンなどが異変を起こします。 このため地球は異常に大きな太陽風(太陽嵐と呼ぶ)で大きく揺さぶられます。 地球のミニプレート境界周辺の亀裂や割れ目のある場所にマントルやマグマや高温・高圧のガスや水蒸気が噴出し、 場合によって火山噴火が起こり、他方で地震が起きるという解釈です。
火山噴火は火口の地下深い場所にあるマグマ溜まりが揺さぶられて火山噴火を起こし、 一方地震はミニプレート境界周辺の脆弱な帯状区域に起きるのだと思います。
新月の時は太陽と地球の間に月が入り込むため、太陽風は地球を取り巻いて渦巻き現象を起こします。 同じように太陽と地球の間に水星や金星など他の惑星が一直線となる惑星直列の時も同様に大きな渦巻き現象を起こし、 地磁気擾乱などにより電波障害をもたらします。太陽活動の異変は大地震の前兆になるのです。
第16報:太陽活動の異変が地震を起こす~その4
配信:2022.10.26
地球が太陽嵐と呼ばれる異常に強烈な太陽風によって大きく揺さぶられて地震や火山噴火を起こすと言われても、 具体的にどのような力学的な力が働いたかが理解できないと思います。私の解釈は以下の通りです。
地球は時速1600kmの速度で自転をしており、太陽の周りを時速10万kmの速度で公転しています。 物凄い速度で回転していますから地球の中にあるマントルなどの高温・高圧の流動体は 常に地表に噴き出す遠心力を受けていることになります。
火山噴火の場合、火口のマグマだまりにあるマグマは、強烈な揺さぶりを受けるとマグマが噴火するのだと思います。 地震の場合には、ミニプレートの境界周辺の脆弱な箇所から、ラドンガスなどの放射性ガスや熱い水蒸気が噴気することが 学術的に知られています。地表に噴き出たガスや水蒸気は上空に上昇し、特殊な雲を形成します。 これを気象衛星画像で判読すれば、地震の前兆を捉えることに役立ちます。
ガスや水蒸気が数時間(長い場合10時間以上になる)噴気すると、 鉄が磁性を帯びるキュリー温度(摂氏1000度)以上になりますので、鉄の磁石は磁性を失い効かなくなります。 登山に使う磁石の磁針も狂います。 これでなぜ地磁気擾乱が地震の前兆になる太陽活動の因子になっているかを理解できたと思います。
ガス・水蒸気の噴気が終わると、冷却が始まり磁性が戻ると同時に膨張していた地殻が収縮して、地下で陥没が起き、 これが地震になるのであろうと私は推測します。しかしこの現象は科学的に観測された証拠がないため私の独自の推論です。 次世代の科学技術が解明してくれるでしょう。
地割れや亀裂から噴気現象が起きることが地震予測に役立つと述べると、多くの方は活断層ではないかと思うようです。 しかし実際に噴気が起きた場所には既存の活断層は存在していませんし、形状も異なります。 断層は地震の結果できた亀裂であり、地震の原因ではありません。 活断層が地震を誘発する起因だとする従来の常識は科学的論拠が希薄であると考えます。
ついでに「プレートの沈み込み」が地震の起因とする従来の常識に対する私の意見を述べます。 「プレートの沈み込み」は仮説であり、科学的に正確に観測された数量的なデータによる科学的論拠がないです。 1年にプレートのどこが何センチ沈んだのかは計測されていません。 そして数量的にどれだけ沈んだら地震が起きるかは分かっていません。 地下深い震源域は現在のように科学技術が発達した今でもミステリーの世界なのです。
直接震源域を観測できなければ、地震の前に間接的に前兆として現れるあらゆる現象を選び出して、 地震との関連性が高いと検証された前兆で科学的に観測されたデータから精度の高い地震予測を行うというのが、 私の地震予測の方法なのです。