2020.02.07
熊本地震後の測位衛星データから九州はそれぞれいくつかの「塊」に分かれており、その「塊」ごとに同じ方向に動いていることを発見しました。
そして、地震は「断層」、つまり「線」が動くことで起こるのではなく、或る「塊」、つまり「面」が動くことでその境界部にひずみが溜まり発生するのではないか…という仮説を立てるに至りました。そして「クラスタリング」という方法を使い、全国の地表の動きを解析し同じ方向に動いている「塊」を抽出し、地震との相関が一番高い8つのブロックに分類し、それを「ミニプレート」と名付けました。
まず、東北・北関東がどのようなミニプレートで構成されているか見てみましょう。
東北のミニプレート⑧は、2011年の東日本大震災の際に、もっとも大きく変動し、津波などの甚大な被害が発生したエリアです。
地表は上下左右に絶えず動いています。下の図は、2011年12月時点の水平変動を表したものです。東日本大地震で地表がどうのように水平変動したのか良く分かります。
日本海溝に向かって大きく変動していることがわかります。また、変動している方向を示す矢印が一点に向かっているのは、変動が地滑り的に発生したことを意味しています。
同様に、高さ方向の変動も見てみましょう。濃い色は大きく沈降したことを表しています。
もっとも大きく沈降したのが東北・三陸エリアのミニプレート⑧。東日本大地震の際、宮城県の牡鹿で110センチの沈降、女川で80センチ、気仙沼と志津川で約65センチの沈降を記録しています。熊本地震でも20~25センチの高さ方向の変動でしたので、いかに東日本大地震が巨大なものであったかがわかります。
震災後、大きく沈降したこのエリアは、元に戻ろうと、現在は隆起し続けています。JESEA地震科学探査機構では、青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県の2018年1月から12月まで隆起の状況を調査しました。
グラフの通り、宮城県牡鹿がいちばん隆起しており、次いで、岩手県大船渡。そのあとに、福島県いわき、茨城県北茨城という順で隆起しています。そして青森県八戸は、ゆっくりとしたスピードで隆起していることがわかります。
隆起の速度が急変している、ということは、「ひずみが溜まりやすい」といえますから、大きな地震が発生しやすい状態でもあります。つまり、このエリアは現在も、注意が必要なエリアであるとJESEA地震科学探査機構は考えています。
東北地方の太平洋側のエリアが隆起している一方で、東日本大地震の被害が比較的少なかった日本海側に位置する山形県と秋田県の地表は、震災後、沈降を示しています。
隆起と沈降の境目にあるのは「奥羽山脈エリア」です。ここは、ミニプレート⑧とミニプレート⑦の境目であり、ひずみが溜まっていると考えられます。
東日本大震災後も、東北エリアの太平洋沿岸エリアは、地震の常襲地帯です。また、海底基準点の動きを見ると宮城県沖と福島県沖の海底の水平方向の動きが、西北西から南東へと変化しており、この事実からも福島県沖にひずみが溜まっているといえます。
つまり、未曾有の大震災から9年あまりが経過した現在も、東北エリアは「危険領域」にあります。今後も十分な注意が必要だといえるでしょう。
村井俊治著書『地震予測は進化する! 「ミニプレート」理論と地殻変動』より抜粋
JESEA 名誉会長
東京大学名誉教授
村井俊治