「地震は予知できない」は、もはや過去の常識?〜予知と予測の違い〜

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2019.09.09

地震大国・日本において、地震を予知できるようになることは、国民全員の願いといっても過言ではありません。しかしその実現に向けたハードルは、非常に高いものです。

そのなかで、JESEA 取締役会長・村井俊治 東京大学名誉教授は「地震の予知が実現する日は、確実に近づいている」と力強く語ります。その自信の理由は、新技術を活用した“地震予知法”にありました。

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従来の地震学では、地震を予知することはできない

まず、これまで「地震は予知できない」と考えられてきました。その理由を教えてください。

これまでテレビなどで「地震」が語られる際に、みなさんが見聞きしている情報というのは、“地震学”的な観点によるものです。

地震学では、地震の際の揺れを計測する「地震計」、地面の下にある「活断層」、「過去の地震の記録」のみに焦点を当てて研究を進めています。しかしそれでは、“リアルタイムの地球の状態”を把握することはできません。

私たちの身体もそうですが、異常を事前に察知するためには、過去の病気ではなく、いまの健康状態を知ることが重要です。それは地球においても同様です。だから地震学会は、東日本大震災の発生を予測することもできませんでしたし、その後「予知は困難である」という声明を出すことになったのです。

この一連の行動が一般に広く浸透し、「地震は予知できない」という認識を多くの人が抱くことになりました。ですが、誰かが地震予知を実現しなければ、再び多くの人の命が犠牲になってしまいます。

それを防ぐために、私たちは日夜、地震予測の研究を進めているのです。

東日本大震災は、JESEA誕生のきっかけとなった地震でもあります。あらためて、JESEAの「MEGA地震予測」は、従来の地震学とどのような点が違うのか、教えてください。

地震が発生することを事前に知るためには、地震の前に起きるシグナル(前兆という)を捉える必要があります。つまり、その前兆を科学的に捉えることができれば、「地震は予知できる」ようになるわけです。

JESEAでは主に、私の専門である“リモートセンシング”の観点から、地震予測にアプローチしています。つまり、リモート(手を使わず)センシング(計測)する技術を使って前兆を捉えて地震を予測するということです。

実は、地球(地殻)は常に動いています。しかし地球上にいる私たちは、それを感じることは、ほとんどありません。さらに地球の動きはゆるやかなため、日常生活においてそれを察知することは非常に困難です。

ですから、地球の動きを正確に知るためには、宇宙の人工衛星(GPS)を利用する必要があります。日本には電子基準点と呼ばれる測位衛星の固定受信局が約1300箇所あり、そのデータを活用すれば、地球の動き(地殻変動)を把握することが可能です。

これにより、JESEAでは“いまの地球の健康状態”を常に監視し、地殻変動からひずみが溜まっている場所を検知し、地震を予測しています。

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電子基準点。全国約1300箇所に存在する

地震の予知は、夢物語ではない

JESEAが会員向けに地震情報を配信している「MEGA地震予測」。その精度が“予測”から“予知”に高まるためには、現在どのようなハードルが存在しているのでしょうか?

地震予知とは、「どこで」「どのくらいの規模」の地震が起きるかを、2〜3週間以内の範囲で予告できる状態を指します。現在の「MEGA地震予測」の精度は、数週間から数ヶ月の時間精度です。そのため予知ではなく、予測という表現を使用しています。

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MEGA地震予測は、震度5以上の地震について、「異常検知から6ヶ月以内」の精度で、85.3%の割合で捕捉している

しかし今年JESEAでは、その精度を“予知”レベルにまで向上できるかもしれない地震の前に起きる新しいシグナルを発見しました。

それが「測位衛星電波の異常」です。また、その解析法については、すでに特許も取得しています。

これまでもさまざまな現象に注目し、「現在の地球」の状態を監視してきました。今後はどのような形で“異常”を検知していくのでしょうか?

これまでJESEAが地震予測をする上で、注視していたのは以下の現象です。
1.地殻の異常変動
2.超低周波の非可聴音(インフラサウンド)の発生
3.疑似的な異常気温変動(電磁波の影響で発生する異常気温の記録)


そこに新たな2つの現象を加えました。
4.人工衛星から捉えた地震雲
5.GPS衛星からの電波遅延(GPSと受信局の間で起きる、超微細な誤差)


特に私たちが期待しているのが、測位衛星電波の異常(5. GPS衛星からの電波遅延)です。この新技術の地震予知法を、私たちはMEGA地震早期警戒システム「MEW」(MEGA earthquake Early Warning)と名付けました。
既に特許も取得しています。

宇宙の人工衛星(GPS)から発信されるデータは、地球の受信局が受信しています。そこでは電波の送受信が行われているのですが、研究の結果、大きな地震の前には、電波(搬送波と呼ばれる)に超微小な異常変動が発生していることを突き止めました。


東日本大地震(2011年)では発生の9日前、熊本地震(2016年)では発生の3日前、胆振東部地震(2018年)では発生の4日前に、測位衛星から発信された搬送波に異常を確認。この事実から「大地震と測位衛星電波の異常には、相関関係がある」と考えるに至りました。

すべて地震発生の2週間以内に起きている現象ですから、他の多くの事例を検証し、また地震が起きない時には現象も出ないという相関関係が確認できれば、「地震の予知を実現」できる日がついに訪れるというわけです。

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この発見は、「地震予知」を実現するための、大きな一歩になると私は確信しています。さらに研究を進め、地震で失われる命がなくなることを心から願っています。

【まとめ】JESEAが「地震予測」に利用している現象と詳細

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1.地殻の異常変動

通常、地球は5㎜~1㎝程度高さ方向に動いています。しかし大地震の前には4㎝以上の大きな変動をすることがあります。これを「地震の前兆現象」の一種と判断し、地殻の異常な変動を確認した地域について、JESEAでは、近い将来、地震が起きる可能性が高いと判断しています。

また突然、ある特定の地域で地殻が高さ方向または水平方向に大きく動いたときは、その地域の近辺で地震が発生する確率は高いと判断しています。さらに、これまで村井教授が17年間の研究から得た経験則として、地表の沈降は地震を予測する上で、非常に重要なシグナルであり、地震発生の可能性が高いと判断しています。

2. 超低周波の非可聴音(インフラサウンド)の発生

大きな地震の前には、人間の耳には聞こえない「インフラサウンド」(超低周音波)が発生することが研究からわかっています。そこでJESEAでは、インフラサウンドセンサーによって、常に超低周波を捕捉し、異常を検知し、地震の予測に利用しています。

3. 疑似的な異常気温変動(電磁波の影響で発生する異常気温の記録)

大きな地震の前には、異常な電磁波が発生します。その電磁波が、地上に設置された「白金抵抗温度計(プラチナを使った温度計)」に影響し、大きな地震の前には実際の気温と異なる気温(疑似気温とよぶ)を示すことがあります。

研究の結果、「気温が安定している夜間に2度以上も気温が乱降下する」という異常気温が記録された周辺では、2週間以内に震度3以上の地震が発生している事例が多くあることがわかりました。JESEAではその異常を検知し、地震予測に利用しています。この地震予測方法は特許取得済みです。

4.宇宙の地震雲

これまでオカルト的に扱われていた「地震雲」ですが、近年、研究によって、科学的な相関関係があるのではないかと考えられています。詳しくはこちらをご覧ください。

5.電波の遅延(GPSと受信局の間で起きる、超微細な誤差)

これまでのJESEAの地震予測方法は、前兆が現れてから実際の地震が起きるまで数週間から数か月の時間精度となっていました。しかしJESEAでは、その精度をさらに高めるため、新たな方法を模索していました。そしてついに、大きな地震の2~3週間以内に、GPSと受信局の間でやりとりされる電波の遅延が発生していることをJESEAでは突き止めました。

それこそが予知レベルの新しい地震予測方法「MEW」です。2019年8月に特許も取得したこの新技術は、GPSなどの人工衛星から地上の受信局までに送られてくる搬送波が、地震の2~3週前から数日前に何らかの理由で、わずか(超微小)に遅れる現象を解析する技術です。

この相関関係を利用すれば、今後、地震は予測から予知のレベルにまでその精度を高められることができるのではないかと、JESEAでは考えています。

JESEA 取締役会長 東京大学名誉教授 村井俊治

JESEA 取締役会長
東京大学名誉教授

村井俊治

取材・文:赤坂 匡介

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