村井俊治の部屋

「村井俊治の部屋」磁気嵐が出た後で大地震が起きる

執筆:村井俊治、JESEA取締役会長、東京大学名誉教授

※本稿は「MEGA地震予測」のコラムにて配信中の「村井俊治の部屋~どこかで大地震が起きる前兆とは?」をブログ用に再編したものです。

磁気嵐が出た後で大地震が起きる

配信:2022.07.27

太陽の活動の異変の一つとして磁気嵐が生じます。磁気嵐とは地磁気または磁場強度が巨大な現象を言います。 磁気嵐と地震の関係を検証した研究結果を紹介しましょう。
理解をしやすくするために、2011年3月11日に起きたM9.0の東日本大震災の前に磁気嵐が出ていたかを紹介します。 震災の10日前に気象庁柿岡の地磁気観測所の地磁気データおよびアメリカの太平洋上衛星で観測された磁場強度が 共に磁気嵐レベルの強度でした。太陽風の速度は3月2日に秒速700kmまで上昇していました。3月5日は新月でした。
2016年4月16日に起きたM7.3の熊本地震ではどうだったでしょうか。 4日前の4月12日から2日前まで連続して3日間地磁気のじょう乱が現れていました。4月7日は新月でした。
2018年9月6日に起きたM6.7の北海道の胆振東部地震ではどうだったでしょうか。 12日前の8月25日から10日前の8月23日前の連続3日間磁気嵐が現れていました。そして9月10日は新月でした。
以上何れも震度7の大地震の前には磁気嵐または磁気の大じょう乱が気象庁の柿岡の地磁気観測所のデータに現れていました。
大地震の前に地磁気の異変が現れたことは確かめられましたが、これだけでは3事例だけですので科学的な検証とは言えませんね。 そこで私は2011年の東日本大震災以降で2021年5月11日までに日本で起きたM6以上の47個の地震について、 果たして地震から半月前までと1か月前までに地磁気のじょう乱が現れていたか否かを検証しました。 検証結果は、半月前までに磁気擾乱が現れた比率は78.7%でした。1か月前までに地磁気じょう乱が現れたのは100.0%でした。 驚きでしたね!地磁気じょう乱が現れたら1か月以内には「どこかで」M6クラスの地震が起きると言えるのです。
上の文章で気になる箇所はありませんか?なぜ新月の日を述べているのでしょうか? 新月と地震発生との間に何か特殊な関係があるのでしょうか?驚くことに関係があるのです。
新月では太陽と地球の間の軌道の中に月が割り込んだ形になります。地球から月を見ると太陽の陰になって月は見えなくなります。 前にも述べましたが、太陽の黒点で核爆発をして放射される爆風(太陽風)は月があるため、渦巻き状になって地球に吹き付けます。 磁気嵐と新月が連動すると、秒速600km以上の高速の太陽風は地球を大きく揺さぶり、地震を誘発しやすくなるのです。
ところで2022年7月19日は磁気嵐でした。7月29日は新月です。8月中旬頃までに日本を含む世界の「どこかで」大きな地震が起きるでしょう。

磁気嵐が出た後で大地震が起きる

配信:2022.08.03

地震と地磁気の間に強い相関があることはお分かりになったと思います。関連した面白い話を紹介しましょう。 江戸時代の「三井」などの大商店は、店の前に馬蹄形の磁石に釘を複数本ぶら下げておき、 釘が落下したら大地震が起きると予測していたと言います。昔の人はすごい経験則を持っていたのですね。 今の地震学者はこんなことは科学的でないと一笑に付すでしょうが、私はこの話は真実であることを科学的に検証してみました。 冷蔵庫に張り付けるマグネットの磁石は昔の磁石より強力なので、地震の前に落下する場合もありますが、 大体はくっついているそうです。
さて日本だけでなく世界の大地震のケースでは地磁気のじょう乱と地震との相関はどうでしょうか?
2004年12月26日に起きたM9.0のスマトラ地震・津波の時は、2週間前の12月12日に 国際じょう乱日(国際的に磁気嵐と認められた日)に指定された大きな磁気のじょう乱が起きていました。 9日前には太陽風の速度が秒速700kmに上昇していました。
世界では観測史上最大の太陽嵐が2003年11月4日に起きたと言われています。 調べてみると11月4日前後3週間ほど地磁気だけでなくあらゆる太陽活動が大異変を起こしていました。 日本では4日前に福島県沖でM7.0の地震が起き、13日後にはアラスカでM7.8の大地震が起きました。 世界で起きた地震の検証に日本の柿岡の地磁気観測所の地磁気観測データを使うのは、普遍性を欠くので、 世界では地磁気のじょう乱を表わす指標にドイツのポツダムにある研究所が定めたKp指数という指数を使いました。 Kp指数のじょう乱と世界で起きた大地震との相関検証をしました。
2016年から2020年までに起きたM6.8以上の大地震94個について半月前までに地磁気じょう乱が現れた確率は62.0%であり、 1か月前までに地磁気じょう乱が現れた確率は88.3%でした。 日本の地震と比較するとやや確率は落ちますが、1か月前までに約9割の確率で地磁気じょう乱と大地震との相関があるのですから、 十分「地磁気じょう乱が現れたら1か月以内に世界のどこかで大地震が起きる」と科学的に言えることになります。 もし新月が1週間以内ぐらいに連動していたら、大地震が起きる可能性はさらに高まるでしょう。 地磁気じょう乱が現れたら「どこかで」大地震が起きると予言できそうです。
次回は地磁気だけでなくオーロラの発生と地震との間に関係があることを紹介します。
先週の第3報で7月19日に磁気嵐で7月29日が新月だから、世界のどこかで大きな地震が起きるでしょうと予告しましたが、 7月27日にフィリピンでM7.0の地震が起きました。第3報の原稿は7月24日に入稿していましたので私も驚きました。

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