インターネットやスマートフォンで「地震」と検索すると、「緊急地震速報」と「地震予測・地震予知」といった言葉が並ぶことがあります。よく似たものと思われがちな「緊急地震速報」と「地震予測」ですが、実はこの2つは仕組みや伝える情報が異なっています。
「緊急地震速報」は「地震が発生してから発出されるもの」であり、「地震予測」は「地震発生前に発出されるもの」という点に大きな違いがあります。
今回は「緊急地震速報」と「地震予測」の違いと、2つをどうやって使い分ければよいかについて解説していきます。
緊急地震速報の仕組み
「緊急地震速報」は気象庁が発出しているものです。スマートフォンアプリなどで民間企業が発出していたり、商業施設等で利用されている「緊急地震速報」も、気象庁が配信しているものを使用しています。
冒頭に解説した通り、「緊急地震速報」は、地震が発生してから発出されるものです。それでは、「緊急地震速報」はどのような仕組みで私たちの元に届くのでしょうか。
(参考・気象庁HP:https://www.data.jma.go.jp/svd/eew/data/nc/shikumi/whats-eew.html)
緊急地震速報の主な仕組みは次の通りです。
- 地震発生を各地の地震計が感知
- 地震計からの情報を気象庁が解析、地震の規模や揺れる範囲、揺れの強さを計算
- 計算結果を「緊急地震速報」として配信
地震が発生すると、揺れは震源から波として伝わります。地震の波には「P波」と「S波」があり、先に伝わるのが「P波」です。強い揺れが発生するのは「S波」であるため、各地の地震計で「P波」を観測後、「S波」の到達前に速報を発信しよう、という考え方で運用されているのが「緊急地震速報」です。
したがって、速報が配信されてから地震による揺れが生じるまでの時間は非常に短くなります。地震によっては大きな揺れ(S波の到達)に速報が間に合わず、速報なしで大きな揺れが生じる場合もあります。震源が地表から近い場合などは、P波の検知・解析・速報配信をしている間にS波(大きな揺れ)が地表に到達してしまうからです。
緊急地震速報は名前の通り「緊急」に発出されるものであり、「地震に対して事前に備える」には不向きと言えます。
地震予測の仕組み
「地震予測」には様々な種類がありますが、基本的には「地震に対し事前に備える」ために配信される情報です。
- 地震の前兆を様々な方法で観測
- 観測データを解析、地震の規模や揺れる範囲、揺れの強さを予測
- 予測結果を「地震予測」として配信
「地震予測」は「緊急地震速報」と異なり「未来起こるかもしれない地震」を予測するため、予測結果が実際に発生した地震の内容と異なる場合もあります。未だ予測精度については「天気予報」ほどには安定しておらず課題も残っていますが、地震予測の技術は日進月歩であり、精度も日々向上しています。
また「地震予測」であれば、地震発生前に地震の予測情報を受け取ることができるため、地震に備えることが可能になります。
緊急地震速報と地震予測の使い分け
緊急地震速報と地震予測の違いをまとめると、下記のようになります。
- 地震発生後に配信
- 地震に備えることは難しい
- 地震発生前に配信
- 事前に地震に備えることができる可能性がある
このような違いを理解したうえで、緊急地震速報や地震予測を利用し、正しく地震に備えることが大切です。