地震の概要
発生時刻:2018年9月6日 3時8分
震源:北海道胆振地方中東部(深さは37㎞、緯度42度41分24秒、東経142度00分24秒)
震度:北海道勇払郡厚真町で震度7を観測。安平町、むかわ町で震度6強、千歳市、日高町、平取町で震度6弱を観測。マグニチュード6.7
被害1:死者41人、負傷者681人。震源に近い勇払郡厚真町では広い範囲で大規模な土砂崩れが発生し、多くの住宅が巻き込まれた。また厚真町、安平町、むかわ町では多数の住宅が倒壊。他に、石狩地方、胆振地方で道路などが損壊。
被害2:厚真町の北海道電力苫東厚真火力発電所で火災が発生した影響で、北海道全域で約295万戸が停電。北海道ではその後、電力の確保のために1週間ほど計画停電が実施された。
MEGA 地震予測による見解
1. 地震発生3ヶ月前、「MEGA地震予測」の警戒レベルは“要注意”
JESEAでは、地震発生の約3ヵ月前、胆振地方(震源地)の地表が隆起から沈降に変化(変動)していることに気付き、注意して観察していました。そのため、7月25日配信の「MEGA地震予測」においても、「胆振地方は沈降をしています」とコメントを出しています。
なお、当時「MEGA地震予測」を通じて発信した、このエリアの警戒レベルは「要注意」でした。
胆振地方は、長期的に見ると、地震発生の6ヶ月前は緑色の“隆起傾向”。しかし、地震発生の3ヶ月前には青色の“沈降”が目立つようになっていました。
さらに地震直前の9月5日の「MEGA地震予測」の隆起・沈降図では、苫小牧から札幌にかけて、はっきりと青色の沈降エリアが現れています。
JESEAの経験則としては、「沈降は隆起よりも、地震発生に強い影響をおよぼす要因である」と考えています。つまり発見次第、地震を警戒しなくてはいけない現象なのです。それが事前に北海道で確認できたこと、さらに今回の震源地はその沈降エリアと隆起エリアの境目にあることも、重要な意味を持つと考えています。
2. 沈降が隆起に転じ、地震を誘発
地震発生前の隆起沈降図に、震度5弱以上の揺れを観測した市町村をプロットしてみると、“沈降エリアの東側の境目”で大きく揺れていることがわかりました。
このことからも、今回の胆振東部地震のキーワードは、「沈降が進行し、隆起に転じた現象」であり、それが地震を誘発したと解釈できます。
また地震の直前、関西国際空港に高潮による甚大な被害をもたらした非常に強い勢力の台風が北上し、この付近の地盤が吸い上げられ、台風通過後、地盤が急激に沈下。それが地震の誘因となった可能性もあります。そして、雨で緩んでいた地盤が地震で激しく揺れたことで大規模な地すべりを起こし、被害が大きくなったと考えます。
3. 地震発生エリアは、5ヶ月前から全体的に地表が沈降
電子基準点のデータから、地震が発生したエリアの隆起・沈降変動をグラフに表しました。
するとこのエリアは、4月頃(地震発生5ヶ月前)から全体的に沈降していることがわかりました。そして7月29日~8月4日の週に、異常に隆起し、その後急激に沈降しています。さらに札幌は、その後再び大きく隆起し、また沈降しています。
このように、沈降した後、隆起に転じ、その後地震が発生する事象は過去にも事例があり、これは地震の前兆(異常変動)の一種と考えられます。
4. 地震直前にも“異常変動”が発生
地震発生の前日(9月5日)、えりもにある、JESEAのプライベート電子観測点は、地震の前兆と思われる“異常変動”が発生していることを検知していました。
村井教授のコメント
今回、後追い検証をしたことで、地震直前に現れる“異常変動”をいくつも確認することができました。そうした情報を「MEGA地震予測」を通じて発信していくことは、“災害に備える”ことを可能にするとJESEAは考えています。今後もJESEAは、さらに正確な地震予測を実現するために、地震予測の研究を進めていきます。