地震を表す指標には「震度」や「マグニチュード」の他にも「深さ」があります。同じマグニチュードで震源の深さが違うと「震度」や揺れる範囲が変化します。今回は「地震の深さ」ついて解説していきます。
地震の「深さ」による揺れ(震度)の違い
地震は地表近くから地下深くまで様々な場所で発生しますが、一般に地下10km ~50km程度の深さで起こることが多いです。過去に起きた地震の深さに着目すると、地域によっては「この深さでよく地震が起こる」といった傾向があることに気付くこともできます。
たとえば、内陸部で起こる地震は地表近く~30kmくらいで起こることが多く、海底を震源とする地震は比較的深い場所で起こることが多いです。
それでは地震の深さと震度の関係を見てみましょう。下記の地図は実際に、2022年1月に茨城県で発生した地震です。 AとBの地震はマグニチュードが3.7と3.8でほとんど同じですが、震度は1と3で異なります。震度は地盤の状態も深く関係するので一概には言えませんが、同じマグニチュードの地震なら、深い地震の方が地表から遠くなる分、震度が小さくなる傾向にあります。
それは、電気スタンドの真下で本を読むときの明るさと電気スタンドから離れて本を読むときの明るさの関係に似ています。また、震源が深いほど地震は広範囲で揺れる傾向にあります。
日本で最も深い地震は?
ちなみに、気象庁震源カタログの記録で「日本で最も深い」とされている地震は、2015年5月30日の小笠原諸島西方沖地震(M8.1、最大震度5強、深さ682km)の余震(同日21時46分、M3.6)で、深さは698kmを記録しているそうです。
(出典:気象庁)
深発地震の例:2015年小笠原諸島西方沖地震
「(マグニチュードが同じでも)震源が深い地震は震度が小さくなり、また、広範囲が揺れる傾向にある」と説明しましたが、その実例をご紹介します。2015年5月30日に、小笠原諸島西方沖を震源とするM8.1、最大震度5強の地震です。
一般的にM8以上が巨大地震と呼ばれるそうですが、この地震はM8.1なので巨大地震の範疇になります。巨大地震と言えば震度7クラスをイメージしますが、この地震の最大震度は5強でした。理由は震源の深さにあります。この地震の深さは682kmととても深かったので、地上での揺れは最大震度5強にとどまったのでした。
また、682kmと大変深い場所で発生したため、振動が広範囲に広がり全国47都道府県全てで震度1以上を観測しました。1885年(明治18年)の震度観測開始以来初めてのことでした。
もちろん、最大震度(5強)を観測したのは震源の真上である東京都小笠原村でした。しかし同時に、最大震度である5強の揺れに襲われたのが、震源から遠く離れた神奈川県二宮町でした。これにはちょっとしたエピソードがあります。
先ほど「震度は地盤の状態も深く関係する」と言いましたが、テレビ報道によると二宮町に住むある住民は「震度5強のような激しい揺れではなかった」と話していまた。ではなぜ二宮町の震度計は震度5強を示したのでしょうか。実は二宮町の震度計は消防署に設置されているのですが、そこは以前田んぼの真ん中で軟弱地盤だったようです。軟弱地盤の場合揺れは大きくなる傾向にあります。
この地震は、特にマグニチュードの大きな地震が、地下の非常に深いところで起きた結果、日本全体に揺れが伝わった事例です。実際に、当時震度4を観測した首都圏では約2万台のエレベーターが緊急停止しました。
このように特に深いところで起きる地震は、震源から遠く離れた場所でも地震による被害が発生することがあります。
地震が起きたときには、「深さ」にも着目してみると様々なことが把握できます。
「マグニチュードは小さいが、浅いので震度が大きかった」地震や、「この地域では地下10km以下でよく地震が起きる」といった、自分の住んでいる地域の傾向を掴むことも、防災への第一歩と言えます。
ぜひ今後は「地震の深さ」にも着目してみてください。