今回は、地震前に起こる様々な前兆現象のひとつ「宇宙から捉えた地震性水蒸気・ガスによる雲画像」と「低気圧通過に伴う地震誘発」についてお話します。
宇宙から捉えた雲画像
地震が起きる前には、地下の岩盤の割れ目から水蒸気やラドンのような放射性ガスが噴出することが知られています。これはDegassing現象と呼ばれています。
この水蒸気や放射性ガスは温かいため、地下から空中、そして宇宙に向かって上昇していきます。
すると、通常の雲とは異なる特殊な形の雲が発生します。
こうして、地震発生前に噴出したガスを宇宙から観測し画像解析します。
この雲画像が地震予測に利用できる場合があるのです。
地下から発生し、宇宙へと昇っていくガスを地上から見たものを「地震雲」と呼ぶ場合もあります。
地上から見た、地震雲と呼ばれるものについては様々な形が観測されており必ずしも地震の前兆と判断することはできません。
しかし、気象衛星、つまり宇宙から観測した雲の画像であれば鮮明に雲のパターンを認識することができます。
低気圧通過に伴う地震誘発
地殻変動によって地面が不安定となりひずみが溜まっているときに、低気圧によって地震が誘発される場合があります。非常に強い台風や南岸低気圧が通過するとき、水面や地盤が持ち上げられ、低気圧が通過した後には再び地盤が下に落とされる、という現象が発生します。そういった水面や地盤の動きが地震を誘発する場合があるのです。このような誘発はトリガー(引き金)とも呼ばれています。
低気圧通過に伴う地震誘発の実例
新潟県中越地震と熊本地震発生時の低気圧の差
上記、図1は2004年10月23日に起きた新潟県中越地震(M6.8、震度7:死者 68名)のデータです。地震発生の3日前に低気圧が通過し、急激に低下しました。
その後、気圧が上昇に転じた直後に地震が誘発された、という事例です。
図2は2016年4月16日に起きた熊本地震(M7.3、震度7)のデータです。地震発生2日前(前震が起きた4月14日)に低気圧が通過しました。気圧が急激に低下したあと、気圧が上昇に転じた直後に地震が誘発されています。
北海道胆振東部地震発生前の低気圧
上記、図3は2018年9月6日03:08に起きた北海道胆振東部地震(M6.7、震度7)のデータです。地震発生前日の9月5日に、台風21号が北海道西側の海上を通過しました。
その台風通過前後の、苫小牧における気圧変化と地震発生の関係をグラフに示しています。
地震発生前日の9月5日、午前2時に最も気圧が低くなり、985.5ヘクトパスカルとなっていました。台風通過後の9月6日、午前3時8分に地震が発生しますが、この時の気圧は1000.0ヘクトパスカルに上昇していました。
2018年台風21号の進路
上記、図4は台風21号の通過・上陸コースを示したものです。
この台風の勢力は、関西空港が雨・暴風・高潮のために冠水したほどの強さでした。この台風が勢力を保ったまま北海道の西側の海上を通過した1日後に地震が起きています。
以上、今回は、地象リモートセンシングで観測できる前兆現象のうち
④宇宙から捉えた雲画像
⑤低気圧通過に伴う地震誘発
を解説いたしました。
今回で、前兆現象の解説は一旦終了となります。
前兆現象については他の記事でも解説しておりますので、ぜひ参考にしてください。