今年は関東大震災の発生から100年を迎える節目の年です。
これから先、いつ起こってもおかしくはないといわれる大地震に対し
今から備えるために、関東大震災など過去の震災で起きた事例や
そもそも津波とは何かについて説明します。
首都圏で地震・津波 過去の事例は?
地震が発生した際、震源が海域である場合に
揺れと共に発生する「津波」。
過去の大地震でも、東日本大震災で大きな被害が発生しました。
周囲を海に囲まれた日本では、
地震と共に発生する可能性の高い災害であり
地震と同様に十分な対策が必要です。
2010年のチリ地震など、震源が日本から遠く離れた場合でも
津波が到達することもあるほか、
近年では2023年10月2日から9日にかけて
鳥島近海で発生した地震によって
八丈島の八重根で60センチ、
伊豆諸島や小笠原諸島、関東、
西日本の太平洋沿岸で数十センチの津波が観測されました。
津波も地震と同様、いつ起こるかわからない災害のひとつなのです。
しかし、実際に津波を経験したことがない場合
どのようなことが起こるかイメージできず
避難の想定がしづらい、という方も多いかもしれません。
ここで、過去に起きた災害「関東大震災」で発生した
津波がどんなものだったかご紹介します。
過去の津波の例:関東大震災
2023年8月に東北大学の研究グループが発表したシミュレーションによると
地震発生当時、神奈川県沿岸では高さ数メートルの津波が
繰り返し押し寄せたとみられています。
つまり、過去の災害において、津波は「一度来たら終わり」ではなく
短時間に繰り返し、何度も高い波が押し寄せて被害をもたらしていたということです。
関東大震災で発生した津波は、
特に神奈川県鎌倉市で大きな被害をもたらし
津波による死者は100人を超えました。
鎌倉市では地震発生から約11分後に4メートル以上の波が到達し、
その後も数十分の間隔をあけ、
2~3メートルの波が繰り返し押し寄せたとみられています。
特に相模湾では、海から押し寄せた津波が湾内で何度も反射し
繰り返し波が襲ったとみられています。
首都圏のなかでも、相模湾沿いや東京湾の近辺、
海岸近くで被災した場合は津波の危険を第一に考え、
大きな地震が発生した際に
津波が発生する可能性を踏まえ、避難経路を検討しておきましょう。
そもそも、津波とは何か
津波からの避難を考える時には
「津波とは何か」を理解することも必要です。
内閣府が発行している広報誌『ぼうさい』によると
津波は、大量の海水が巨大な塊となって押し寄せるもの、とされています。
これは通常の「海の波」とは何が違うのでしょうか。
海岸付近に住む人であれば、
テレビで報じられている天気予報で
日常的に「波の高さ」の情報に触れているかもしれません。
波の高さが2~3メートルであることは珍しくなく、
天候が悪くなればそれ以上に達することもあります。
それでも、津波となると「数十センチ」の高さにも関わらず
避難勧告が出されることがあります。
これはなぜでしょうか。
実は津波と通常の波では「波が発生する原因」に違いがあり
同じ波に見えても性質がまったく異なっているのです。
通常の波、「波浪」と呼ばれるものは
普段私たちがよく見る「海の波」です。この波浪は、風の力によって発生します。
一方で、津波は地震が原因で起こる波です。
この波は、震源に近い海底で地震が発生し、
それによって生じた海水面の盛り上がり・落ち込みによって生じています。
浴槽の水に置き換えて説明すると、
水面に息を吹きかけて起こるのが「波浪」
浴槽の底に手を入れて、水を押し上げた時に起こる波が「津波」です。
波浪は「海面」の水だけが風で動くため、
一度に動く水量は比較的少ないです。
しかし津波は「海底」から「海面」まで
すべての水が一度に動いて押し寄せるため非常に力が強くなります。
また波の大きさ自体も、
波浪は数メートル~数百メートルであるのに対し
津波は数キロメートル~数百キロメートルになることもあります。
つまり、報じられる「波の高さ」が同じでも、
波浪の2メートルと津波の2メートルでは
到達する海水の量と勢いがまったく違うということです。
津波はたった50センチでも自動車を押し流す力があり、
1メートルでも木造家屋に被害が出る可能性があります。
津波が発生した際、避難指示や避難勧告で
「津波の高さは1メートル」と報じられても、
避難を検討する必要があるのはこのためです。
今回は、過去に津波で被害が出た例から
津波とは何か、なぜ津波の高さが1メートル以下でも
避難指示や勧告が発令されるのか説明しました。
次回以降、津波からの避難について
具体的な方法や過去の事例をまじえて
説明していく予定です。