Opinion

地震で津波発生 避難の体験談や注意点

今年は関東大震災の発生から100年を迎える節目の年です。
これから先、いつ起こってもおかしくはないといわれる大地震に対し
今から備えるために、前回に続き津波について説明します。

前回は津波警報などにおける「波の高さ」や
津波の速さについて説明しました。
今回は実際に起きた地震の体験談をいくつか紹介し、
津波の「遡上高」や津波から逃げるための注意点を説明します。

津波からの避難 とにかく早さが大事

津波被害から生存した人の体験談で
多く語られるのが、とにかく海の近くで揺れを感じたら
すぐさま高台に避難した、そのおかげで助かったという点です。

内閣府がまとめた資料である
『北海道南西沖地震災害教訓情報資料集』には
平成5年(1993年)に発生した北海道南西沖地震の
体験談がまとめられた箇所があります。

体験談の中には
「風呂上がりだったが、過去の経験から絶対に津波が来ると思い
バスタオルを羽織ったまま高台に逃げた」
「歩行困難な祖父を車に乗せてすぐに逃げた。
靴も履かずに裸足で運転していた」
といった記述がありました。

過去の津波を経験していた近所の人や祖父母から
早く逃げろと声をかけられて逃げられたというケースもあります。
共通しているのは、津波を経験した方の多くが
「とにかく早く逃げる」ことを推奨していることです。

『北海道南西沖地震災害教訓情報資料集』に記載された
北海道南西沖地震はマグニチュード7.8、最大震度5の大きな地震で
日本海で発生した地震としては最大級のものでした。
奥尻島は地震計が設置されていないため
推定ですが、震度6の揺れが発生していたとみられています。

この地震では大規模な津波被害が発生し、
津波の高さは175cm以上にも達しました。

175cm以上と表現しているのは、
当時の測定範囲上限を超過するほどの大きな波だったためです。
後日行われた調査では、奥尻島においては
最大で高さ29mの地点まで津波が遡上した痕跡が残っていたといいます。

ここで注意しなければならないのは、
津波が到達した場合、地形の状況によっては
津波の高さ(波の高さ)よりも高い場所まで
遡上してくることがある、ということです。

波の高さが数メートルでも、波が陸上で坂などを駆け上った結果
数十メートルもの高さに到達する場合があります。
そのため、とにかく早い段階で
少しでも高い場所に避難する必要があるのです。

この地震では、地震発生から5分後には津波警報が発令されましたが
奥尻島にはその前に津波が到達していました。
この地震を教訓に技術の改善がはかられ、現在では地震発生から3分後には
津波警報が発令できるよう体制が整えられています。

しかし、このブログで何度もお伝えしているように
津波が到達する可能性のある場所では
警報の発令を待たずに、
大きな地震が起きたら津波を警戒して
すぐに高台へと避難することが重要です。

津波の「遡上高」とは何か

先ほども説明した通り、
津波は波の高さよりも高い場所まで
遡上してくることがあります。

これを「遡上高」といい、気象庁によると
「遡上高」は「波の高さ」の2~4倍に達することが多いとされています。

つまり警報などで報じられる「波の高さ」より
上にいれば安全というわけではなく、
地形によっては波が遡上してくる可能性も考え
少しでも高い場所へ避難することが必要になります。

津波が陸地の川と合流したり、
V字型の谷のような地形では遡上高が高くなることがわかっています。
津波予報や注意報で「数十センチ」の津波が予想されたとしても
場所によっては1m以上の高さまで波が到達する場合があるため
気象庁や自治体は、海の近くで大きな揺れを感じた場合、
すぐに避難するようにと呼びかけています。

また、津波は何度も繰り返し押し寄せます。
第一波が一番高いとは限らず
第二波、第三波が第一波よりも高いケースもあります。

一度波がひいたとしても、
警報等が解除されるまでは安全な場所にとどまったり
必要に応じてより高い場所への避難を検討することが必要です。

前回もお伝えしましたが
津波は数十センチの高さでも大きな被害をもたらします。

1mの津波に人が巻き込まれると、
計算上の死亡率はほぼ100%であり
たった30cmの津波でも流されたり歩行が困難になります。
遠くを目指すよりは、少しでも高い場所
建物の上層階や屋上などに避難するようにしましょう。

また、津波からの避難は徒歩が推奨されています。
東日本大震災では、車での避難を試みた人が多く出た結果
沿岸部で渋滞が発生し、それによって逃げ遅れたケースもありました。

ただし歩行困難な高齢者などが家族に居る場合など
やむを得ないケースでは車での避難も検討に入れ、
普段から「地震が来たらこの高台へ逃げる」等
避難経路の把握をしておくことが必要です。

また緊急時の行動を家族とすりあわせ、
万が一はぐれて行動したりバラバラに逃げることになっても
問題なく行動できるようにしておくことも必要です。
東日本大震災では、震災直後に沿岸部に住む家族を
迎えに行って津波に巻き込まれたケースもあります。

今回は、過去の津波被害の体験談や
津波の遡上高について説明をしました。
次回も引き続き、津波からの避難について説明する予定です。

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