今年は関東大震災の発生から100年を迎える節目の年です。
これから先、いつ起こってもおかしくはないといわれる大地震に対し
今から備えるために、今回は津波について説明します。
前回、そもそも津波とは何か
なぜ数十センチの波の高さでも警戒が必要なのか説明しました。
今回は実際に津波が発生した場合、
避難する際に注意することや
津波警報などにおける「波の高さ」について説明します。
津波:避難の際に注意すること 津波の速さ
津波への対策としては、
もちろん気象庁や各自治体で
様々な対策が講じられています。
避難勧告の発令や津波注意報等の情報を
どのように扱うかは後述しますが、
第一に、災害からの避難においては
「自助努力」が何より重視されます。
発生する災害や、個人の状況によって
最適な避難状況は異なってくるからです。
この記事では、
最適な避難行動を考えるための一助として
和歌山県串本町(※)の
「津波の心得5か条」を紹介します。
内閣府の広報誌「ぼうさい」 にも掲載された心得です。
①地震が起きたら、まず避難
②津波は繰り返し来襲します
③情報を待っていては、逃げ遅れます
④家族で話し合っておきましょう
⑤津波は引き潮から始まるとは限りません
(※)和歌山県串本町は「本州最南端の町」であり
南海トラフ地震の被害想定では
「最大波高18m(※和歌山県発表では17m)」の
津波が押し寄せるとされています。
「津波の心得5か条」が示す通り、
地震が起きた際、津波が到達すると予想されている地域
または海岸近くにいる場合は、とにかく避難を優先します。
内閣府の広報誌「ぼうさい」においても
『地震が起きたら直ぐに海岸から離れ浸水予想地域の外まで避難するのが大原則だ』
とされています。
なぜ即座に避難することが必要なのかといえば、
津波の進む速度は非常に速いからです。
たとえば過去、2010年2月に発生したチリ地震では
太平洋岸を中心に、日本にも津波が到達しました。
この際に到達した津波の速度を平均すると
時速770kmの速度であったといわれています。
新幹線の速度が時速250km、
ジェット旅客機の速度は時速800kmほどですので
2010年のチリ地震で発生した津波は
ほぼジェット機並の速度だったということです。
ただし、津波の速度は、「水深が深くなるほど速い」ため
深海ではジェット機並の速度となり
水深1mほどで時速34kmほどとされています。
この時速は100mを10秒で移動できる速度であるため
水深1mの場所で発生した津波でも、
オリンピック選手並みの速度で動くことがわかります。
なお、東日本大震災において
岩手県宮古市に到達した津波の時速は115kmでした。
串本町の「津波の心得」にも
③情報を待っていては、逃げ遅れます
とありましたが、それはこのように
津波の押し寄せる速度が非常に速いためです。
津波が到達する前に、
可能な限り海岸から離れることが重要です。
特に、徒歩で移動できない高齢者や
幼い子供など、移動に時間のかかる人と避難する場合は
地震発生後すぐに避難する必要があります。
避難勧告・避難指示への対応
津波到達予想地域に居る場合は
すぐに避難を検討し、避難をしながら、
気象庁や自治体から発令される
津波警報・注意報を参考に行動することが推奨されています。
ここで、津波警報等の種類について説明します。
気象庁は、地震が発生した際に
地震の規模・位置を推定し、沿岸で予想される津波の高さを計算後
地震が発生してから約3分後を目標に
「大津波警報」「津波警報」「津波注意報」「津波予報」等の
情報を発表します。
3m以上の津波が予想される場合「大津波警報」
1~2mの津波が予想される場合「津波警報」
0.5mの津波が予想される場合は「津波注意報」
津波による災害の恐れはないものの、
海面変動が起こる可能性がある場合は「津波予報」が
それぞれ発表されます。
内閣府の広報誌「ぼうさい」 によると
「これらの判定は、津波予報区内にある
複数地点における津波の高さの予測値の中で、
一番高い値に基づいて行われる。」とされています。
つまり「予想される一番高い波」に基づいて
発表されるということです。
津波の高さは50cmでも自動車を押し流すことができ、
1mあれば木造家屋に被害が出る、
とは前回説明した通りですが
なぜ3mが「大津波」なのでしょうか。
「波や水の高さ」を具体的にイメージできないと
脅威を想定するのは難しいため、
一般的な住居において「何メートルで何階に達するのか」を
防災ハザードマップでは下記の通りまとめていますので、ご紹介します。
浸水の深さ
・5m以上:2階の屋根以上が浸水
・3m~5m未満:2階の軒下まで浸水
・2m~3m未満:2階の床まで浸水
・1m~2m未満:1回の軒下まで浸水
・50cm~1m未満:床上浸水
・10cm~50cm未満:床下浸水
つまり、3mもの津波が到達した場合
2階の軒下まで浸水するため、1階部分は完全に浸水しています。
この状況では、2階以上の建物に避難したうえで
津波がひき安全が確保されるまで移動することはできなくなります。
津波による被害や、避難のイメージをつかむために
ご自身のお住まいの地域において
津波の予想高は何メートルか、
津波の予想到達時間はどの程度かを把握しておくことで
地震発生後の避難に備えることができます。
ハザードマップ等を確認する場合、
予想される津波の高さや到達時間を把握し
到達時間までに、高台へ避難するための経路を確認しておく
避難できる高台や場所を複数見つけておく等で
津波の際に避難できる可能性が高まります。
次回も引き続き津波からの避難について
説明する予定です。