Opinion

大地震からの避難 自宅で被災したときに火は消す? 風呂の水は貯める?

今年は関東大震災の発生から100年を迎える節目の年です。
これから先、いつ起こってもおかしくはないといわれる大地震に対し
今から備えるために、
前回に引き続き「避難」の際に注意すべきポイントについて説明します。

今回は地震が発生したときに
自宅が無事だった場合、
在宅避難を選んだ時に注意すべきポイントや
避難生活に必要なものについてご紹介します。

被災時から避難まで やるべきことは

在宅で被災した場合、まずは安全を確保するための行動をとります。
大きな地震が起きた時、揺れを感じたら行うことを
普段からイメージしておくとよいでしょう。

具体的な行動としては、以下の点があげられます。

・ドアを開けて出入り口を確保
・カーテンを閉める
・ペット等を安全な場所(ケージ内など)に移動する
・自分の身を守る

実際に揺れが発生した場合は、
時間的猶予もないため
上記行動の中からひとつかふたつを選ぶことになります。

自分が出入り口(ドア)の近くにいるなら
ドアを開けてから安全な場所に移動するなど
その時の状況に応じて最善の行動が選べるよう
普段からイメージしておきましょう。

ドアを開けるのは、揺れによってドアが歪んだり
倒れたものでふさがる等で
外への脱出が困難になることを防ぐために行います。

カーテンを閉めるのは、窓ガラスが割れた場合に飛散を防ぐためです。
窓ガラスに飛散防止フィルムを貼るのも有効な手段です。
万が一窓ガラスが割れても、割れたガラスが飛び散らなければ
ケガをする可能性を低くすることができるからです。

飛散防止フィルムは「割れることを防ぐ」わけではなく
「割れた破片が飛び散ることを防ぐ」ものであるため
台風等の風水害にも有効な対策です。
余裕があれば導入を検討しましょう。

何故なら、災害時にガラス等でケガをした場合、
建物の倒壊や道の混雑等で普段よりも移動しづらい状況で
より移動・避難しづらい状態になってしまうからです。
病院は災害時に多数発生した怪我人に対応しているため
普段通りの治療を受けることはほぼ不可能だといえます。

災害時はとにかく、小さな怪我でも防ぐことを意識してください。
防災対策の段階で、怪我につながる要因を
細かく排除していくことをおすすめします。

火は無理に消さない・風呂に水は貯めない 防災の新常識

被災時の初動対応として

・ドアを開けて出入り口を確保
・カーテンを閉める

等の行動を紹介しましたが、

「まずは台所のガスを消すのが優先では?」と
思った方もいらっしゃるかもしれません。

確かに、国の被害想定においても
首都直下型地震が発生した場合、
火災で多くの被害者が出るとされているため
火災を防ぐ行動は重要です。

しかし現在は、プロパンガスも含め
すべてのガスには「マイコンメーター」の設置が義務付けられています。

1997年から設置が義務化された「マイコンメーター」は
震度5強相当の揺れを感知すると
自動でガスを遮断する仕組みになっています。

震度5強以上の地震であれば
マイコンメーターにより自動で消火される可能性が高いため、
大きな揺れのなか、無理に火を消しに行く方が危険であるとされています。
そのため現在では「地震でも無理に火は消さない」ことが推奨されています。

マイコンメーターは都市ガスだけでなく
LPガス(プロパンガス)にも設置されており
東日本大震災や熊本地震において二次災害の防止に大きく貢献しました。

揺れが収まってから、ガスが消えているか確認し
念のためガスメーターをチェックして、ガスが止まっていることを確かめることで
二次災害や火災の発生を防ぐようにしましょう。

また、災害時の初動として「風呂に水をためる」という方法を
記憶されている方もいらっしゃると思います。

これは、1995年以降(阪神淡路大震災発生後)には
広く浸透した方法ですが、現在の状況では誤りとなります。

まず、風呂に水を貯めたとしても
その水は飲用や食器洗浄に使うことは、衛生上困難です。
災害時は特に病院の利用がほぼ不可能になるため
食中毒等のリスクは極力避けなければならないからです。

風呂の水の使い道として、多く想定されるのは
「トイレを流す水として使う」ことですが、
この方法は国土交通省が「避けるように」と呼びかけています。

災害時断水となった場合には、くみ置きの水をトイレに流してはいけないのです。
理由としては以下の2点があげられています。

①配管が破損している場合、汚水が漏れる
②汲み置きの水では流しきれない場合がある
流しきれない汚物が配管に溜まるとメタンガスが発生し、危険

東日本大震災でも、集合住宅で
「上の階の汚水が階下の部屋にあふれた」例もあります。
一見問題がなさそうでも、配管に損傷がある可能性があり
その場合にトイレから水を流してしまうと階下や周囲に大きな影響があります。

集合住宅でなくても、上記のリスクから
配管の無事が確認できるまでは使用しないことが推奨されています。

つまり、風呂に水を貯めていても
トイレに流せるわけではないため、
災害時に有用とはいいがたい状況です。
そのため、現在では、風呂に水を貯めることはあまり推奨されていません。

食器洗浄その他に使う水を貯める場合は
災害時に使用できるウォーターバックを用意しておくと便利です。
1個30リットルのウォーターバックであれば5~6個あれば
風呂にためる量と同じだけの水を確保できます。
飲用水は、それとは別に普段からペットボトルの水を多めに購入しておく、
災害用の長期保存水を備蓄しておくなどで対策しましょう。

また、災害時に水を流してはいけないのなら
トイレはどうすればよいのでしょうか。

自宅に携帯トイレの備えがない場合は
避難所等の仮設トイレを利用することになります。
しかし内閣府が過去の災害をもとにまとめた
『避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン』によると
避難所に仮設トイレが設置されるまでは約5日かかることが多く
最も遅い場合では設置までに65日を要したケースもあります。

一般に、トイレ利用回数は一日5回が平均値です。
この数値をもとに、少なくとも家族で7日分は
携帯トイレを備蓄しておくことをおすすめします。

トイレの備蓄がない場合、排泄を避けようと水分や栄養の摂取を避けることで
健康被害が発生する可能性が高くなることがわかっています。
特に高齢者や子供のいる家庭では、トイレの備蓄は特に重要です。
避難所の仮設トイレは和式である可能性もあり
トイレをうまく利用できない場合もあるためです。

このように、時代の変化によって
防災の常識も変わっています。
常に最新の情報を参照して、知識をアップデートし
普段から地震に備えるようにしてください。

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