今年は関東大震災の発生から100年を迎える節目の年です。
これから先、いつ起こってもおかしくはないといわれる大地震に対し
いまどんな被害が想定されていて、
どのような対策が行われているのかを知ることが
災害に備える、防災の第一歩であると考えます。
今回は、首都圏で大きな地震が起きた際、
想定されている被害と、行われている対策について説明します。
首都直下地震の被害想定
今回は、2022年5月に「東京都防災会議」の地震部会で
新たに検討された被害想定について説明していきます。
東日本大震災を踏まえ策定されていた被害想定である2つの被害想定
「首都直下地震等による東京の被害想定(平成24年公表)」
「南海トラフ巨大地震等による東京の被害想定(平成25年公表)」を
10年ぶりに見直し、検討されたものです。
実際に発生する地震の震源がどこになるかは予想できないため、
東京都の被害想定は、震源別に6種類作成されています。
想定されている震源と規模は以下の通りです。
①都心南部直下地震(M7.3)
②多摩東部直下地震(M7.3)
③大正関東地震(M8クラス)
④立川断層帯地震(M7.4)
⑤南海トラフ巨大地震
⑥海域を震源とする地震
都心南部直下地震(M7.3)の被害想定と対策
東京都が想定したもののなかでも、
最大の被害が出ると予想されているのが
①都心南部直下地震(M7.3)です。
今回は上記震源の場合想定されている火災被害と
帰宅困難者についての説明をしていきます。
①都心南部直下地震(M7.3)の想定は、
関東大震災で火災の被害が多かったことを踏まえ、
火災の被害が広がりやすい「冬・夕方」に発生するとしています。
都心南部で直下型地震が発生した場合、
江戸川区・江東区など11の区で震度7の揺れが予想されています。
また都内の多くの地域で5強~6強の揺れが発生するとみられ、
約19万棟の住宅に被害が出るとされています。
そのうち、全壊する建物はおよそ8万2200棟とされ、
特に都内東部で被害が大きいとみられています。
上記のうち約11万棟は火災で焼失すると予想されており、
特に焼失による被害が多いと予想されているのは
大田区・世田谷区・品川区・目黒区・杉並区・足立区・葛飾区・墨田区・江戸川区・江東区でした。
原因としては、上記の地区には特に木造住宅が密集していることがあげられます。
これらの地域は「木密地域」と呼ばれ、地震火災で大きな被害が出ると想定されている地域。
東京都はこれらの地域を「不燃化特区」に指定し、燃えにくい材質への建て替え等を援助しています。
具体的には、不燃特区内にて、
老朽建築物とされる住宅の除去費用を援助したり新たな住宅の建築費や工事費を助成しています。
工事費については令和5年から拡充されています。
また、こうした建て替えへの助成は現時点で
「令和7年度まで」とされているため、
近年特に「不燃化」にむけての取り組みが推進されています。
帰宅困難者
都内で最も多くの被害が出るとされている
都心南部直下地震(M7.3)の想定では、
帰宅困難者の数を約453万人としています。
東京都の昼間人口(東京都に通勤・通学している人)は
1,592万人とされているため、
昼間人口の約28%が帰宅困難になると予想されています。
地震の揺れにより公共交通機関の機能が停止し、
道路も緊急車両優先となるため、
多くの人が徒歩や自転車で帰宅を目指すと想定されています。
理由としては、
通信の途絶等により家族の安否が確認できない、
また自分の安否も伝えられないこと。
さらに公衆電話はこの10年で数が半減しており東京都内に14,894個しかありません。
日本国内では最大の設置数ですが、
緊急時には多くの人が公衆電話に殺到し利用できないケースも考えられます。
そのため、災害時の連絡手段を確立させておき、
家族間でよく相談しておくことで、無理な帰宅をせずに済む場合があります。
自宅付近よりも職場や、職場近くの避難所にとどまったほうが安全なケースもあるため、
災害時に安否を確認したい人がいる場合は
通信が途絶しても安否を確認できるようにしておくことをおすすめします。
具体的には以下の方法があります。
- 災害掲示板を利用する
- 災害時に自宅が無事なら自宅、避難所を利用するならここ、等の避難先を決めておく
- 「●時に○○に集合」等、時間と場所を決めて待ち合わせをする。
1日で合流できない可能性も高いため、「毎日●時に○○で●分待機」など
合流できる可能性の高い待ち合わせを設定しておく
通信・交通の機能が停止しても
家族と無理なく合流できるよう、災害発生前から検討しておくことが大切です。
次回からは首都直下地震で想定されている
火災や帰宅困難者以外の被害についても説明していきます。