今回は、発生から100年が経った「関東大震災」について
いままでに出されたことのある地震の予測、周期説や
周期説をもとに行われた防災対策について説明していきます。
関東大震災の予測・周期説って本当?
関東大震災については、かつて東京大学地震研究所の所長を務めた
故・河角廣(かわすみ・ひろし)氏が提唱した「69年周期説」が有名でした。
関東大震災から69年後に、同じような規模の大地震が起こるという説です。
関東大震災は1923年に発生しているので、69年後は1992年。
この説において誤差は前後13年とされていたので、
1979~2005年の間に75%の確率で起こるといわれていました。
東京大学地震研究所の所長が提唱した説であるため
多くの人に信じられていましたが、実際には予測した期間に地震は起こりませんでした。
関東大震災の周期説から行われた防災対策
つまり「69年説」は、大地震の予測としては「はずれ」となってしまいました。
しかしまったく無意味だったわけではありません。
「69年説」の提唱によって、
当時あまり進んでいなかった首都圏や都内の防災対策が推し進められました。
特に火災への対策や、災害時の広域避難についての取り決めが進んだのは
首都圏だけでなく、日本の防災にとって大きな意味を持っています。
「69年説」がきっかけとなって、その後も少しずつ防災対策が整備されました。
また整備中に「阪神淡路大震災」が発生。
その被害を分析した結果、「事前復興対策」の取り決めや、
都市全体で被害の軽減を目指す取り組みも推進されました。
木造住宅の密集地「木密地域」への防災対策
東京都の防災対策で重視されているのが「火災対策」です。
関東大震災において大きな被害が「火災」から生じたことから
大きな地震が発生したとき、
火災による大規模な延焼を防ぐために様々な対策が取られています。
そのひとつが「木密地域」
つまり「木造住宅の密集地」への取り組みです。
関東大震災では、特に火災による死者が多く
犠牲になった人の9割は火災による「焼死」で命を落としています。
地震による火災が発生したとき、
燃えやすい木造家屋が密集している「木密地域」で延焼が生じたことが
被害拡大の要因のひとつであったと考えられています。
そのため、「木密地域」の住宅を
燃えにくい材質のものに建て替えたり
延焼を防ぐための「延焼遮断帯」を構築する必要があります。
「木密地域」は都内・山手線外周部を中心に広く分布しています。
東京都は「防災都市づくり推進計画」にもとづき、
「木密地域」の中でも特に大きな被害が予想される地域を
「整備地域」として定め、下記3点を基本とした対策を施してきました。
- 延焼遮断帯の形成
- 安全な市街地の形成
- 避難場所等の確保
ただし2021年時点で都内の不燃化対策は
完全には完了しておらず、いまだ進行中となっています。
不燃化対策の結果、どれほど街が燃えにくくなったかは
「不燃領域率」という指標で表すことが出来ます。
この「不燃領域率」が70%を超えると延焼の可能性がほぼなくなるとされていますが、
現在東京都が「整備地域」として対策を進めている地区のうち
「不燃領域率」が70%を超えている地域は2018年時点で4地域にとどまっています。
火災被害拡大の原因となった
「木造住宅の密集地」がいまだ完全には解消していないことから
大地震の発生に備えた東京都内の対策は「完了した」という状況ではなく
今も日々少しずつ、より万全な体制を目指し改善を積み重ねている状態といえます。
こうした町全体・国全体の防災対策を進めるには地域住民の協力や理解が不可欠です。
日本全体で地震災害に備えるためには
私たち一人ひとりが防災に関心をもつことが大きな意味を持っているといえます。
JESEA(地震科学探査機構)では引き続き、
地震予測情報の提供を通じ、地震について正しく知り、
備えるきっかけを提供していきたいと考えています。