南関東はこの先、どのように動くか――村井俊治 東京大学名誉教授が語る地震予測

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2020.02.07

テレビや新聞では、たびたび「首都直下地震」の危険性が取り沙汰されています。しかし、首都圏が揺れる地震は首都直下地震に限りません。例えば、伊豆諸島が震源でも首都圏に大きな被害が出る揺れが起きる可能性があります。今回は、JESEA地震科学探査機構の予測、首都圏にも被害をもたらす【南関東周辺】の警戒状況について、お伝えします。

東京にも影響を与える「南関東周辺」の地震

1703年に発生した元禄地震(推定M8.2)。その震源は、千葉県・房総半島南方沖で、死者は約7000人と推定されています。そして1855年に発生した安政江戸地震(推定M6.9)の震源は、東京都・荒川河口付近で、死者は約1万人と推測されています。

1923年に発生した関東大地震(M7.9)の震源は神奈川県・相模湾北部だと推定(所説あります)されており、死者は主に火災が原因でありながら、約10万人にものぼりました。

地震の被害は、広範囲におよびます。ですから首都圏にお住いの方は、首都圏だけでなく、伊豆諸島近海や静岡県の伊豆半島および御前崎周辺、富士山に近い富士五湖エリア、茨城県南部や埼玉県など、広いエリアの異常変動を把握しておくことが重要となります。

なぜなら、震源の位置と最大震度を示す場所は、震源が深いと大きく異なるケースがあるからです。

象徴的な事例として、2015年5月30日に起きた小笠原諸島西方沖地震(M8.1、最大震度5強)が挙げられます。東京都心から約1000キロメートル離れた小笠原諸島付近で発生した地震でしたが、震源に近い小笠原村だけでなく、神奈川県の二宮でも最大震度5強を記録しています。また埼玉県の鴻巣市、春日部市、宮代町でも震度5弱、東京都心でも震度4を記録しています。なお、この地震の震源の深さは、観測史上もっとも深い682キロメートルでした。

加えて、東京都心は、高層ビルが林立していますから、震源が遠くても、揺れ方によってはエレベーターが停止するなど、二次災害の危険がある点にも注意が必要です。

伊豆諸島近海に溜まっている「ひずみ」

JESEA地震科学探査機構では、東京都に設置されている主な電子基準点を用いて、地震の前兆のひとつである、地表の高さ方向の異常変動を調査しました。

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東京都の高さ方向の変動状況(2018年1月6日から2018年12月8日まで)

伊豆諸島・神津島と式根島は沈降しているのに対して、近い距離にある三宅島、大島、御蔵島、八丈島、都区内の練馬および小笠原諸島の父島は隆起していることがわかります。このことから、伊豆諸島近海にひずみが溜まっていると解釈できます。

地震発生の可能性が高い「沈降エリア」

さらに2020年1月19日から1日25日の南関東の隆起・沈降を下記の地図に示します。

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南関東の隆起・沈降図(2020年1月19日から2020年1月25日まで)

すると、過去6ヶ月以内に5センチ以上の高さ変動があった場所が、伊豆半島および伊豆諸島に多数見られました。また静岡県の御前崎周辺、千葉県房総半島中央部に帯状の「沈降エリア」が見つかりました。沈降エリアは、地震につながる可能性が高いため、注意が必要です。

駿河湾沿い、相模湾沿い、房総半島沖の状況について

JESEA地震科学探査機構では、同じ方向に動いている地表をクラスタリングした「ミニプレート理論」を提唱しています。南関東のミニプレートは下の図の通り、①、②、③、④、⑤で構成されています。

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南関東のミニプレート拡大図

ミニプレートの境界は、ひずみが溜まりやすいため、警戒すべきエリアです。特に伊豆諸島・駿河湾沿い、神奈川県・相模湾沿い、千葉県・房総半島は、互いにミニプレートの境界が接していますから、注意が必要なエリアといえます。また伊豆諸島近海は、今後も、ひずみが溜まっていくと予測されますから、十分に注意が必要です。

村井俊治著書『地震予測は進化する! 「ミニプレート」理論と地殻変動』より抜粋

JESEA 名誉会長 東京大学名誉教授 村井俊治

JESEA 名誉会長
東京大学名誉教授

村井俊治