Opinion

東日本大震災後も東北地方で地震が頻発する原因は?

今回は、東日本大震災後に、特に東北地方沿岸で起きた大きな変化について説明します。東日本大震災の影響で日本の地殻は変化し、特に東北地方沿岸は大きく沈み込んだまま今も元に戻ってはいません。大地震の影響で沈み込んだ後に隆起を続け、今も震災前の状態に戻ろうと動き続けていることが、東北地方で地震が頻発する原因のひとつだと考えられます。

東日本大震災後に沈み込んだ地殻

この図は東日本大震災が発生して約1か月後の地殻の動きを示したものです。ここでは上下の動きを表していて、青・紫に近い色で表現された場所が沈んでおり、緑・橙に近い色ほど隆起していることを示しています。東日本大震災発生後、震源に近い東北地方沿岸が一斉に沈降していることがわかります。この沈み込みは最大で1.1mでした。

陸域でこれほどの沈み込みが発生したのに対し、海域では最大3mもの隆起した地点がありました。この高さの変動(落差)が津波を生じさせたと考えられます。

東日本大震災の際には、図の通り東北地方を中心に広い地域で地殻の沈降(沈み込み)が生じました。ここで大きく沈降した地域はその後、隆起をはじめます。

東日本大震災後で沈んだあと元に戻ろうとする地殻

この図は2011年の震災後から2016年、2022年の地殻の様子を表したものです。2011年には沈み込んでいる(紫色)地域が多かったのですが、震災から5年が経過した2016年には隆起している(橙色)地域が増えていきます。2022年には隆起している地域がさらに拡大しています。また、同じ隆起傾向にある地域でも、橙色と緑色の地域は隆起する速度が異なります。橙色の地域は隆起する速度が速いので、他の色の地域との間にひずみが生まれます。沈降している地域でも同様のことが言えます。

東日本大震災の影響はいまも続いている

図で解説した通り、東日本大震災で一斉に沈み込んだ地殻は、その後反対に隆起を続けています。しかし、完全に元の位置に戻ってはいません。現在も、特に東北地方では地殻が活発に動いています。地殻が動けばひずみが生じやすくなり、結果的に地震も多く発生します。東日本大震災の後も、東北地方を震源とする地震が多いのは、地殻が変動しているため、ひずみが生じやすい地域であるからと考えられます。

東日本大震災で特に沈降した宮城県の「牡鹿」と「女川」が、震災で一気に沈降し、その後長い時間をかけて隆起する様子を示したグラフです。このように、震災で沈降した地殻は今でも、隆起し続けています。

 

東日本大震災から11年経ち、復興も進んでいるために、ふとすると「東日本大震災」は過去のものと考えてしまいがちです。しかし実際の地殻の動きを見ると、東日本大震災の影響は未だに残っています。地震を予測するためには、日々の地殻変動を観測することに加え、こうした長期の変動にも注目する必要があります。

 

JESEAでは日々刻々と変化する地殻変動を観測・分析し地震予測に役立てているほか、こうした長期の地殻変動にも着目し、新たな地震発生の前兆を捉えようとしています。

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