Opinion

首都直下地震の防災対策 避難時の混雑 徒歩帰宅の場合

今年は関東大震災の発生から100年を迎える節目の年です。
これから先、いつ起こってもおかしくはないといわれる大地震に対し
日頃から備えるために、今回は「避難」の際に注意すべきポイントについて説明します。

歩道の混雑

首都直下地震の被害想定では、
首都直下で地震が発生した場合、
帰宅困難者は約800万人にのぼると想定されています。

東日本大震災においては
首都圏で発生した帰宅困難者は約515万人。
東日本大震災の時に帰宅困難になった人数よりも
約300万人多くなる予想です。

約800万人が帰宅困難に陥るということは、
それだけの人数が一度に帰宅を試み
歩道や車道を徒歩で移動するということになります。

その分、歩道や車道は混雑し、
緊急車両の通行が遅れたり
群衆雪崩という現象によって被害が出ることが懸念されています。

対策としては、「帰宅を焦らない」ことがあげられます。
東京都は大規模災害時の帰宅困難者対策として
「あなたのために、帰らない」を掲げています。

・災害時の混雑により
救急車、消防車等の緊急車両の通行が妨げられる

・多くの人が密集することで
群衆雪崩のリスクが高まる

「帰らない」ことで上記のリスクを避け、
災害時の危険を少しでも減らそうという取り組みです。

東日本大震災が発生したときに帰宅困難者になったという方は
首都直下地震が発生した場合にも帰宅困難者になる可能性が高いと考え、
「帰らない」ための対策を講じることをおすすめします。

具体的には、家族や身近な人とは「災害時伝言板」等のシステムを利用し
あらかじめ安否確認の手段を整えておくことで
無理な帰宅をしないことが有効な対策となります。

特にオフィス街や鉄筋製の住宅で被災した場合は
建物に大きなダメージがなく一部損壊程度であったり
火災の危険がなければ、その場にとどまることが推奨されています。

「電話ボックス程度の面積に6人以上」が集まる大渋滞

東京大学大学院工学研究科が開発した
「大都市圏避難シミュレーション」では
首都圏で地震が発生した場合に
都内で生じる混雑状況を予測しています。

この想定では、都内のいくつかの場所で
1平方メートルあたり6人以上の過密状態が発生するとしています。
1平方メートルは「電話ボックス」と同じくらいの大きさです。
電話ボックスの中に6人以上の人がいる状況を想像すると
震災直後に発生する混雑がいかに過密かわかると思います。

過密状態が発生すると予想されているのは
都内30か所にものぼりますが、代表的なものは下記です。
・東京 丸の内
・渋谷駅前 明治通り
・新宿駅前 甲州街道
・赤坂見附駅周辺

都内の混雑は災害発生直後から
時間が経つごとに郊外へと広がっていき、
首都圏(東京・埼玉・神奈川・千葉)の県境近くでは
災害発生から3~5時間後に
最も重篤な混雑が発生すると予想されています。

職場など自宅から遠い場所で被災した場合は
なるべく「帰らない」ことを選ぶ一方で、

自宅近くで被災し、火災の危険がある場合は避難が必要になるため、
帰宅困難者で道路が混雑する前に
つまり3時間~5時間以内に移動することも視野に入れましょう。

③帰宅困難者の避難先
自宅から離れた場所で被災した場合、
無理に「帰らない」ために利用できる施設があります。

「災害時帰宅支援ステーション」
「災害時サポートステーション」のステッカーが掲示されている
コンビニやファミリーレストラン、ガソリンスタンドは
被災者や帰宅困難となった人向けに
災害時に水やトイレを提供しています。

東日本大震災以降、都内で設置が進められているため
普段利用している店舗や、被災する可能性が高い場所の周辺に
こうした施設があれば場所を覚えておきましょう。

また、移動中など屋外で被災した帰宅困難者向けに
東京都などの自治体は「一時滞在施設」の確保を進めています。
大地震が発生した際には、こうした「一時滞在施設」のうち
受け入れ可能となった施設の情報を各自治体が発信するとしています。

ただし被災時の状況によって
施設の利用が不可能になる場合もあるため、
一時滞在施設の利用については、
施設開設の情報が発信されてからの行動が推奨されています。

一時滞在施設の利用可否は災害発生時の状況次第ですが、
被災する可能性が高い場所(職場・学校など)の周辺に
どんな一時滞在施設があるかを把握しておくことで
実際に帰宅困難となった場合にも慌てずに
行動することができます。

一時滞在施設の一覧は各自治体のホームページ等に
掲載されていることが多いため、
一度目を通すことをおすすめします。

今回は、首都直下地震が発生した場合に
徒歩で屋外にいた場合の防災対策について説明しました。

次回は車や公共交通機関利用時に被災した場合について
説明する予定です。

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