日本は、8つのミニプレートに分けられます。 そして、地震は「断層」、つまり「線」が動くことで起こるのではなく、或る「塊」、つまり「ミニプレート」が動くことでその境界部にひずみが溜まり発生するのではないか…という仮説を立てるに至りました。それが、JESEA地震科学探査機構が提唱する「ミニプレート理論」です。今回は、ミニプレート理論で見る【近畿地方】の動向について、お伝えします。
ミニプレートの境界付近は注意が必要
近畿地方はミニプレート①、②、③、④、⑤で構成されています。このミニプレート上に、2011年以降に発生した、最大震度5弱以上の地震の位置を示したものが下の図です。
東日本大震災(2011年3月)以降、近畿地方では、最大震度5弱以上の大きな地震はあまり起きていません。
2011年7月5日に発生した和歌山県北部地震(M5.5、最大震度5強)、2013年4月13日に発生した淡路島付近地震(M6.3、最大震度6弱)、そして2018年6月18日に発生した大阪府北部地震(M6.1、最大震度6弱)の3回のみです。
大阪府北部地震はミニプレート①と④の境界で、和歌山県北部地震はミニプレート①と②の境界で発生していることがわかります。淡路島付近地震は、ミニプレート①と④の境界からはやや離れているものの、“境界の近く”で発生しています。
さらに、大阪府北部地震が発生した6月18日に公開された、5月27日から6月2日までの地表データ(国土地理院最終解データ)を調査したところ、この週に“異常変動”と見られる4センチを超える高さ変動が3箇所で確認されました。
それが大阪府・箕面、京都府・京都加茂、兵庫県・宝塚です。この地震の前兆と思われる現象が発生した3地域は、すべてミニプレート①と④の境界付近に位置しています。こうした事実から、「ミニプレートの境界付近は注意が必要」であると、JESEA地震科学探査機構では考えています。
ミニプレートの境界には、ひずみが溜まっている
次に、2018年11月から12月末までに、近畿地方で起きた最大震度3以上の地震について見てみましょう。
これら小地震の震源の位置を見てみると、ミニプレート①と②の付近に分布していることがわかります。この事実から、大阪府北部地震では、ミニプレート①と④の境界で発生し、その後はミニプレート①と②が動き、ひずみが溜まっていると解釈できます。
変動バランスが崩れ始めた「南海・東南海地方」
地表は絶えず動いています。しかし大きな地震の前には、その前兆と思われる“異常変動”があります。南海・東南海地方では、2018年7月29日の週に、大きな変動が確認されています。
ご覧の通り、紀伊半島および四国が、一斉に西北西または北西に変動したのです。日本列島は現在、主に「南東」に動いている傾向にあります。しかし南海・東南海はその真逆、「北西」方向に動いているということは、変動バランスが崩れ始めてきたことがわかります。
このことから南海・東南海地方は今後の観測データの監視が必要であると、JESEA地震科学探査機構では考えています。
「和歌山県」の今後は、ミニプレート③の沈降次第
続いて、和歌山県にエリアを絞り、高さ方向の変動を見てみましょう。2010年1月から2018年12月までの変動を表したものが下の図です。
エリアではなく、ミニプレートごとにこのグラフを見てみると、ミニプレート①、②、③がそれぞれ異なる動きをしていることがわかります。近畿地方では、ミニプレート①が激しく変動しているため、ミニプレート①との境界に、いちばんひずみが溜まっていると考えられます。
なお地表の変動は、隆起よりも沈降に注意が必要です。ですから今後、ミニプレート③(串本)の沈降が大きく進行した際には、注意が必要です。
※村井俊治著書『地震予測は進化する! 「ミニプレート」理論と地殻変動』より抜粋
JESEA 名誉会長
東京大学名誉教授
村井俊治