地震に関する記事

【論文公開06】日本列島9年間の変動に見る巨大地震の影響 〜巨大地震によって、日本列島はどう変動したか〜

講演の概要

約1300点ある国土地理院の電子基準点の週平均XYZデータを2010年1月から2018年12月まで整備し、日本列島が9年間でどのように変動したかを解析した。この9年間で2011年3月11日に東日本大震災および2016年4月16日に熊本地震の二つの巨大地震を経験した。日本列島がいかにこの二つの巨大地震で激動したかを振り返る。ミニプレート(地体)理論は既発表であるが、巨大地震によっていかにミニプレートが変動したかについても検証を行った。巨大地震後の日本列島の状態を知ることは、将来の地震予測に貴重な情報を与えてくれる。

日本列島の高さ方向の経年変化

国土地理院の電子基準点データは日平均値の地球中心座標XYZで与えられる。全国約1300点ある電位基準点データについて2010年1月から2018年12月までの9年間の週平均XYZを算出し、日本列島の高さが9年間でどのように経年変化したかを解析した。
グラフ表示をすると、日本列島は刻々と変動を続けている様子が浮き彫りになる。特に2011年3月11日の東日本大震災では日本列島全体が激動した様子がわかる。図1は一番激しく変動した宮城県の高さの変動を示している。太平洋岸の牡鹿、女川、気仙沼、志津川は地震で大きく沈降し、その後隆起を続けている。
2016年4月16日の熊本地震では熊本から大分県の湯布院に向かう東北東方向で長陽および菊池は大きく隆起し、熊本、城南、阿蘇は大きく沈降したことが分かる(図2参照)。
伊豆諸島を含む東京都の高さの経年変化を見ると、震源から遠く離れた青ヶ島が東日本大震災で大きく沈降した。三宅島は隆起を続け、父島は沈降し、神津島は一旦隆起した後沈降に転じている(図3参照)。

図1:宮城県の高さ方向の経年変化
図2:熊本県の高さ方向の経年変化

 

図3:東京都の高さ方向の経年変化

 

以上のグラフからも分かるように、日本列島はそれぞれ刻々と変動を続け、巨大地震の後は特に激動することが分かる。

日本列島の水平方向の経年変化

2009年1月を起点として2018年末まで、過去9年間の累積水平ベクトル図を作成した。図4は日本全体の変動である。東日本大震災時及びその後の変動がいかに大きかったか分かる。図5は熊本地震があった九州・四国・中国地方を拡大した図である。地体毎に変動が異なる様子が分かる。図6は南関東の水平変動を示す。伊豆諸島の変動が他のエリアと異なることが分かる。

図4:9年間の日本列島の累積水平ベクトル
図5:九州・四国・中国地方の水平変動

 

図6:南関東の水平変動

 

日本列島の地体クラスタリングによる動画表示

国土地理院の約1300点の電子基準点の中には、季節変動があったり、ダムや海岸近くにあるため乱高下したり、樹木の繁茂によりノイズが大きく出ていたりなど、通常の地殻変動分析から削除した方が良い点が100点弱存在する。これらの不具合点を削除しないと動画で突出した点として不自然な動きをするだけでなく、地体クラスタリングが正常に作動しない。巨大地震の時に激動した点は意味ある変動であるから削除はしない。
2011年から2017年末までの週平均データXYZを使用して地体クラスタリングを行い、水平変動と高さ変動に分けて動画を作成した。予稿集では図表現できないので発表時に映像で紹介することにする。

結論

9年間に及ぶ日本列島の高さ方向および水平方向の連続的な経年変化を可視化すると、日本列島がいかに変動しているかが鮮明に理解できた。特に東日本大震災および熊本地震の巨大地震で日本列島は大きな影響を受け、現在もその影響は続いていることを認識できた。
長期および短期の変動において地体あるいはミニプレートごとに変動は異なり、隣り合うミニプレートの互いのせめぎ合いで地震を誘発するひずみまたはエネルギーが貯まると考えられる。経年変化の分析は地震予測に大きな役割を果たすと言える。

参考文献

 

JESEA 名誉会長 東京大学名誉教授
村井 俊治

JESEA 代表取締役社長
橘田 寿宏

朝日航洋株式会社
鈴木 英夫

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