2019.02.21
地震大国・日本。震度5以上の地震が発生する可能性は、どの地域にも潜んでいます。ですが地震を防ぐ方法はありません。だからこそ、「地震に備える」ことが重要になります。では、そのためにどんな準備をすべきなのでしょうか?
創業1966年、“総合防災”をテーマにさまざまな防災サービスを展開している相日防災株式会社の防災士・峯尾佳代子さんに「自宅、職場、外出中の地震対策」についてお話を聞きました。
防災士は、自らを助ける“自助”、共に助け合う“共助”、協力し合う“協働”を重んじる防災のスペシャリストです。さまざまな場面、状況に合わせた、防災の知識を有していることを証明するものでもあります。
この資格が生まれたのは、1995年に発生した「阪神・淡路大震災」の際に、近隣の住民同士が助け合い、大きな効果を発揮したことが影響しています。そのなかで、防災の正しい理解・知識について注目されたことで、防災士という資格が誕生しました。
地震を防ぐことができない以上、防災士としては、減災のための「備え」は必ずしてほしいと思います。まず自宅にいて地震が発生した場合、いちばん怖いのが家具の転倒です。
阪神・淡路大震災では、家具の下敷きになって亡くなった方が大勢いらっしゃいました。それを未然に防ぐために、家具の転倒防止対策はぜひお願いしたいです。特に寝室にある家具は、必ず対処してほしいと思います。
簡易の方法としては、突っ張り棒を家具の天板と天井に挟む、というものがありますが、設置の仕方を間違えると効果がないケースもありますので、注意が必要です。正しい設置は、家具の天板の壁側(後方)から左右に2点、突っ張り棒を付けることで、家具を安定させる方法です。
しかし木造住宅の場合、地震の激しい揺れに耐えきれず、天井に穴が空いてしまうケースもあります。ですからおすすめは、家具の天板と壁をL字金具で固定する方法です。壁は石膏ボードに覆われている事が多いので、必ず下地を探して取り付けて下さい。これなら家具の転倒を防ぐことが可能です。
もし賃貸住宅で、壁にL字金具を付けるのが難しいのなら、強力な粘着テープ(家具の転倒防止用のもの)を使った固定具を利用する方法がおすすめです。粘着テープ式であれば、壁や家具に穴を開けずに短時間で設置できますので、転倒防止がまだの方は、ぜひトライしてみてください。
はい、その通りです。ですから、家具と天井の隙間に、ぎゅうぎゅうに雑誌を詰めて固定する、というのも有効な方法です。少し大変かもしれませんが、とにかく「家具を固定する」ことが大事だと、理解してもらえればと思います。
2011年に発生した「東日本大震災」以降、それまで3日分と言われていましたが、“最低7日間分の備蓄”が推奨されるようになりました。理由は、津波や原発事故など想定外の事態に救助の遅れなどが発生したためです。
もし首都圏で大地震が発生したとなれば、大きな混乱が予想されます。道路は遮断され、街は人であふれるでしょう。すぐに食料も足りなくなることが予想されます。最悪のケースを想定し、常に食料と水は余裕を持って備蓄しておいてほしいと思います。
まず非常食ですが、近年は非常に進歩していて、どれも食べてみるとおいしいので、驚かれると思います。種類も豊富ですし、まずはいろいろ試食してみてほしいですね。その中から口にあったものを、いくつか備蓄するといいでしょう。被災時に美味しくない食事をしたくはないですから。最近のものは、賞味期限も長く、5年持つものが主流です。
また地震発生の際は、断水するケースが多くあります。水が流れない以上、トイレは利用できなくなりますから、携帯トイレは必須です。少し田舎であれば、地面を掘って用を足すという対処法もありますが、地下水の汚染に繋がりますから、防災士としては、おすすめできません。
あると便利という観点では、カセットコンロは重宝します。お湯を沸かしたり、もちろん通常の調理ができますから、食生活の充実につながり、避難生活を少しでも快適なものへと変えてくれるはずです。ですのでガズボンベは多めに用意しておくことをおすすめします。
ちなみに、ここまで話した家具の転倒防止、備蓄に関しては、自宅だけでなく、オフィスで地震が発生した際も同様です。加えてオフィスで被災した場合には、自宅へ歩いて帰ることも想定し、「帰宅セット(携帯用の食事や水、トイレのセットなど)」の用意も必要になります。
ぜひ自宅と職場、両方の備蓄状況を一度、確認してみることをおすすめします。
まずは上から物が降ってくる可能性があることを知ってほしいと思います。たとえば、割れたガラスや壁はもちろん、転倒防止をしていなかった家具などが窓を突き破り、頭上から降ってくる可能性も十分にありえます
まずはカバンなどで頭を守ることが大切です。堅牢な建物でしたら外に飛び出すより中にとどまるほうが安全です。そして、帰宅難民になってしまったら、情報が集まりやすいので、近くの指定緊急避難場所に避難しましょう。
災害が発生すると、携帯電話が使えなくなるケースもあります。その際に知っておいてほしいのが、「公衆電話はつながる可能性が高い」ということです。公衆電話というのは、緊急時を想定して、優先的につながる回線になっています。ですから、もし携帯電話が使えなくなっても、公衆電話は使えるケースというのが有るんです。
しかし仮に、携帯電話が使えるからといって、油断してはいけません。災害時はデマや根拠のない噂が広がることがあります。情報の正確性を見極めて、慎重に読み取ることが大切です。
地震がいつ来るか、それは誰にもわかりません。だからこそ、シミュレーションしておくことが大事なんです。たとえば自宅、職場、外出中、地震が起きたらどうするかを考えてみる。それだけで、実際に地震が起きたときの行動は大きく変わるはずです。
最終的には、“備えるもの”も、人によって優先順は違うはずですから、自分にとって家族にとって大切なものをしっかりと備蓄しておくことが重要です。地震は必ず起きます。だからまずは備えること。それを防災士として、多くの方に最後にお願いしたいです。
相日防災株式会社 課長 / 防災士
峯尾 佳代子
取材協力:相日防災株式会社 / 取材・文:赤坂 匡介