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JESEAが提供する地震予測情報アプリ「MEGA地震予測」は、地表を監視し、異常変動を検知することで地震の予測をしています。その方法を生み出したのが、測量工学の世界的権威である村井俊治東京大学名誉教授です。なぜ村井教授は、本来ならば畑違いであるはずの「地震予測」の研究を始めたのでしょうか? そこには村井教授のある“思い”がありました。
村井教授
2002年に、荒木春視(あらき・はるみ)博士から「GPSで地震予測ができそうなので、一緒に研究しませんか?」と誘われたことがきっかけです。みなさんもご存知の通り、GPSは人工衛星を使った位置情報サービスなどに使われているシステムです。つまり、GPSを使った“測量工学的なアプローチによる地震予測”の研究に私は誘われたわけです。
地震予測は人類がまだ達成していない最も難しい科学技術のひとつですし、実現できれば多くの人の命を救うことができます。私は「この研究に残りの人生を捧げよう」と決め、荒木博士と一緒に研究を始めました。
ですが当初は誰も見向きもしてくれず、苦難の時代が続きました。一時は、大手電力会社の協力を得て、研究を進めていた時期もありましたが、それでも認めてくれる人が増えていくまでには非常に長い時間を要しました。
村井教授
私は測量工学の人間ですから、地震学の素人が「地震予測」をすることに対して、当初は負い目を感じる瞬間もありました。そんなとき、東京大学地震研究所で長年教授を務めた方から「地震学は地震のメカニズムを研究するもので、前兆を捉える研究はしていない。だから村井さんには、期待しています」と言われたことが非常に励みになりました。
また研究を進めるなかで、大地震の発生の際には、地表に異常変動が起きるという事実に対して、確信に近いものを感じていたことも、挫けなかった理由のひとつだと思います。
村井教授
はい。私は東日本大震災の直前(6ヶ月前)に、東北地方において、地表の異常変動を確認していました。それは一目でおかしいと感じるレベルのものでした。しかし当時は、データの提供企業と守秘義務契約を結んでいた関係もあり、その事実を情報発信することはできませんでした。それを私はいまも、非常に後悔しています。
あくまで「地震の予知」ではなく、「地震の予測」ですから、地震発生を断定することはできません。それでも注意喚起をするだけでも、充分に効果はあります。もしかしたら近いうちに大地震が来るかもと思っている人と、来るわけがないと思っている人では、いざ大地震が発生した際の対処も当然、変わってきます。東北地方であれば、津波を警戒し、すぐに高台に向かって逃げることもできたでしょう。そうすれば、逃げ遅れる人をひとりでも減らせたかもしれません。
ですから、「地震予測情報」を発信すること。そのこと自体に意義があるのだと、私は現在、考えています。
こうして2013年1月、橘田寿宏氏(現・代表)および谷川俊彦氏(現・取締役)とともに株式会社地震科学探査機構(JESEA)を設立。同年2月7日から「週刊MEGA地震予測」の発行を始めました。「MEGA地震予測」はそのアプリ版です。
村井教授
はい。大地震の前には、いくつかの異常現象が起きることがこれまでの研究でわかっています。
※電離圏:地表から高さ約60km~500kmの大気圏の上層部。太陽からの紫外線など、大気が電離されて生じた電子やイオンが存在する領域。
JESEAでは、上記4つをさまざまな技術や機器を組み合わせ、計測・分析することで、「地震予測」を可能にしています。
地球は絶えず動いていますが、特に「1.地殻が変動する」に関しては大地震の前には特徴的な現象が発生します。通常、地表は上下左右に1〜2cm程度の変動をしますが、大地震の発生前には4cmを超える異常な変動を起こします。さらに超巨大地震の東日本大震災の際には、プレスリップ(前兆すべり)と思われる現象が確認されました。
現在では、AIによる最先端テクノロジーを駆使したビッグデータ解析による、異常検知の研究も進めています。今後さらに精度の高い地震予測を実現できたらと思っています。
村井教授
「MEGA地震予測」の最大の課題は、時間精度がまだ充分ではないことです。現状は数ヶ月の精度を、最低1ヶ月以内、理想は1週間以内に発生する「地震」を予測できるようにしていきたいと考えています。
さらに現在、「1時間以内に発生する地震を予測」するための技術開発ロードマップも構想中です。そこに向け、人口知能の活用、さまざまな機器の導入・開発を実施している段階です。実験的検証にもすでに取り組み始めていますので、近年中に私たちが掲げる目標を達成できる可能性も充分あると考えています。
災害はいつも予想外です。だからこそ、備えが必要です。ぜひこの機会に「MEGA地震予測」アプリのダウンロードをご検討いただけたら幸いです。
地震の前兆(1.地殻が変動する/2.低周波の音が伝わる/3.低周波の電波が出る/4.電離圏に乱れが起きる)を捉えるために、「MEGA地震予測」では以下の方法を採用・研究しています。
国土地理院が設置した全国1300ヶ所の電子基準点(測量における基準点)の三次元データから、主に高さの異常変動(隆起・沈降傾向)を分析し、同時に約1ヶ月間の水平方向の異常変動分析を行うことで地震予測を実施。さらに国土地理院のデータは時差があるため、自社2基とNTTドコモの支援により設置した全国計18基のプライベート電子観測点を利用することで、異常変動をリアルタイムで監視し、予測の補完をしています。またデータの分析に、人工知能を利用することで、精度の向上を目指しています。
人間の耳に聞こえない非可聴音である低周波を検知する「インフラサウンドセンサー」を中国から導入。アジア一帯の広範囲における、地震予測に役立てています。低周波の検知に関しては、超低周電磁波の受信装置(MW遠隔予知装置)を新たに設置し、予測の補完を行い、精度の向上を図っています。
人口衛星から発信された信号波が宇宙の電離圏※を通過する際、地震の前に異常な遅延をする前兆を研究しています。
※電離圏:地表から高さ約60km~500kmの大気圏の上層部。太陽からの紫外線など、大気が電離されて生じた電子やイオンが存在する領域。
地震の前兆現象を捉えて
地震を予測する
東京大学名誉教授 村井俊治 監修
MEGA地震予測