Opinion

地震雲から地震を予測できるか?~科学的根拠あり~

執筆:村井俊治、JESEA取締役会長、東京大学名誉教授

地震雲をはじめとした宏観異常現象についての見解

はじめに私の見解を述べたいと思います。「地震雲」や地震の前兆とされる現象・宏観(こうかん)異常現象は一般人の経験談として学術的に否定されてきたものばかりです。しかし、その中には貴重な事実があることを見逃してはならないと思います。既存の科学的理論から外れた事象や実験ミスで得られた思わぬ発見が、人類を救う大発見となりノーベル賞をもらった研究者がいるのを知っています。
人類史上、正確な地震予知が未だ確立していない現在、あらゆる可能性に挑戦することが重要だと思います。たとえ一般人でも、その発見や経験から重要なヒントが得られる可能性はあると思います。そういう意味で私は「宏観異常現象」の一つである「地震雲」について興味を持って取り上げてみました。

地震雲に対する考え方
珍しい雲を写真・動画に記録しよう~地震の前触れ?

村井俊治は2002年に地震予測の研究を始めてから18年になりますが、地震の前に地下深いところで起きる高温・高圧下の圧縮、引っ張り、ズレなどの応力変化が圧電効果となって地中のみならず、地表、空中および宇宙まで様々な前兆現象を誘発するのではないかという仮説を立てました。どんな些細な現象であっても地震を予測するためにあらゆる可能性を模索する必要があると思います。

大地震が起きると色々な方々が様々な前兆現象があったと報告します。普段起きないような珍しい雲に出会うと「地震雲」ではないか、そしてそれが地震の前触れではないかと噂が流れます。地震の前に動物などが前兆現象を感知する現象を宏観異常現象とも言います。地震は極めて複雑な現象ですから、単純なモデルでは説明不可能な様々な様相を表わすことがあります。「地震雲」もおそらく宏観異常現象の一つといえるでしょう。

宏観異常現象には地震雲のほかに発光現象、井戸水の異常低下、温泉水の温度上昇、動物が騒ぐ、深海魚が海面に浮いてくる、地球・太陽・月・惑星の特殊な天体位置、めまいや頭痛がする、など様々あります。

地上から見た地震雲が科学的に意味を持つには、どのような雲がどのような地震の前に現れたか、数十例の証拠写真と詳細な記録を残すことが大切です。その他の宏観異常現象についても同じことが言えます。しかし地震雲を含めてその他の宏観異常現象が生じるような大地震は滅多に起きませんから、科学的な検証事例として数十事例の記録を一人で作ることは困難です。大勢の人たちの情報共有の仕組みが必要でしょう。

普段見られない可笑しなそして珍しい雲が現れたらとにかく写真を撮影しておく態度が重要です。大空を眺める人は沢山います。普段目にしない不思議な形をした雲に不安を感じ、不思議に思い、写真や動画に記録する人が必ずいます。そのような雲が現れてから数時間後、数日後や数週間後に大地震が起きるとネットなどで、地震の前兆だったと騒がれます。一般に地震雲と地震との相関関係は地震学の分野では認められていません。したがって学術論文として発表されることは殆どありません。しかし一概に科学的に否定することもできないです。

地震雲の種類

今迄ネットなどで報告されてきた地震雲の形は多種・多様です。ここでは真実か否かは問わない事にして、過去の大地震で地震雲と報告されたものを紹介します。

竜巻状地震雲

  • 2018/9/6 北海道胆振東部地震(M6.7)
  • 2011/3/11 東日本大震災(M9.0)
  • 1995/1/17 阪神淡路大震災(M7.3)

帯状型地震雲:2016/4/16 熊本地震(M7.3)

放射状地震雲:2004/10/23 新潟県中越地震(M6.8)

断層型地震雲:1993/1/15 北海道釧路沖地震(M7.5)

肋骨状地震雲:2005/3/20 福岡県西方沖地震(M7.0)

レンズ状地震雲:2019/6/18 山形県沖地震(M6.7)

ネットで上記の地震の時の雲の映像が見られるものもあります。ただし雲は見る場所と角度、時刻や空の背景などから見え方が異なりますので、映像を見ても本人以外は判然としないこともあります。私もいくつかの地震雲と言っている映像を見ましたが、写真を撮影した時の臨場感や驚きが伝わってこなかったものもありました。でも確かに普段見慣れた雲でない形状のものもあって興味を覚えました。

 

地震雲の正体はラドンガス?

地震の前や火山噴火の前に地中からラドンガスが噴出することが分かっています。地震学以外の分野で学術論文も発表されています。ラドンガスは地中のウランが自然崩壊してできる放射性ガスです。地震の前や火山の活動が激しくなると地割れができた隙間からラドンガスが噴出します。このようなガスの噴出を英語では「degassing」と言います。海域に震源がある場合にはラドンガスが海面に噴き出すので海面温度が上昇します。村井俊治の専門のリモートセンシングの学問領域では1980年代から地震の前に震源周辺で海面上昇が起きることは人工衛星画像の解析で分かっていました。ただしこの原因がラドンガスとは分からず、現象として地震の前に海面温度が上昇する事実が論文に発表されていました。中国の研究者から海面温度と地震の関係を論じた著作本を贈呈されたこともあります。樹木が少ないイランなど中東の砂漠地帯では地震の前に地面の表面温度が上昇することも事実として発表されています。

ラドンガスと地震の相関に関する論文や資料はネットでも調べられますが、下記にいくつか紹介します。

ラドンガスと地震に関係する論文・記事などのURL

 

https://science.sciencemag.org/content/269/5220/60

https://www.bing.com/images/search?q=radon+gas%2c+earthquake&qpvt=radongas%2c+earthquake&FORM=IGRE

https://en.wikipedia.org/wiki/Earthquake_prediction

https://www.nature.com/articles/srep13084

 

それではラドンガスの噴出から地震予測ができるかと言うと、それは現実的ではありません。実際に地中にラドンガスを収集する器具や装置を設置している研究者もいますが、火山のようにガスの噴出箇所が事前に判明している場合、設置場所の特定は容易です。しかし地震はどこで起きるか分かりません。だからと言って日本中にラドンガスを収集する装置を設置することはできないため、予測に活用することは難しいです。

ところが約10数年前から、地割れまたは断層から噴き出したラドンガスは空中に上り、どうも雲を形成するらしいと推量され、研究を進めた研究者がいました。ラドンガスが空に上昇してできたと思われる雲は通常の雲より温度が高いはずですから、赤外線を使っている気象衛星の画像で温度の異なる雲として分かるはずです。

 

気象衛星の雲画像で地震予測をする
~かなりの確率で的中する~

2019年1月に中国の南陽師範大学のリモートセンシングセンター長のDr. Guo Guanmengから突然、メールが私に舞い込みました。気象衛星の雲画像から地震を予測する研究をしているのですが、日本の地震予測の第一人者である村井名誉教授と一緒に研究したいという内容でした。私は「地震雲と思われる衛星画像が現れたら私に送ってください。私もチェックして地震予測が的中していることが確認できたなら一緒に共同研究しましょう」と返事しました。

最初のうちは、日本の「どこの地域でどのくらいのマグニチュードが何日以内に起きる可能性がある」というメールでエビデンスとなる雲画像が添付されていなかったです。私は科学的エビデンスがなければ、信用できないし、共同研究もできないとメールで返事したところ、私のやる気を察してくれて、雲の衛星画像に丸印を付けて予測をしたものを送ってくれるようになりました。なんと結構予測が的中するので驚きました。詳しくはJESEAのホームページに掲載してあります。下記URLで見られます。

https://www.jesea.co.jp/article/details/004/

2019年2月から2020年5月までDr. Guoは1事例の宇宙から見た地震雲の画像付きで地震予測の情報(日本周辺)を提供してくれましたが、1事例を除いて的中していました。90%の高確率です。勿論全ての地震の前に地震雲が現れるわけではなく、むしろ少ないですから、この地震予測を以って日本のすべての地震予測ができるわけではありません。宇宙から見た地震雲が判読できたときには90%の確率で的中させることができるといえます。JESEAが進めている様々な予測方法を補完する手法として意義があります。

 

衛星画像で解析する地震雲から地震予測を行う日中共同研究

地震予知学会が千葉大学で2017年5月26日に主催した「International Workshop on Earthquake Preparation Process 2017」でDr. Guoは論文「Predict Japan strong earthquake with satellite clouds data-one year validation」を発表しましたが日本の地震学者は何の反応も示さなかったそうです。地震大国の日本では評価されると思ったのに全く興味を示してくれた研究者がいなかったことにショックを受けると共に非常に失望したと言います。

このような背景から宇宙から見た地震雲に興味を示しそうな研究者の候補者の一人として私にコンタクトをしてきたのでした。2019年の1月からDr. Guoと宇宙から見た地震雲から地震予測を行った事例を検証してきました。一番難しいことは宇宙から見た雲のどのような形状・形態・容態・変化を地震雲として扱うかでした。
指摘されるとなるほどと納得できるのですが、白紙の状態から地震雲の存在を探り当てるのは、経験が必要なことが分かってきました。しかし根気よく情報交換をしているうちにDr. Guoは私の本気度を理解してくれるようになり、是非JESEAで働き、地震予測に貢献したいと言ってきました。JESEAは10人以下の小さな会社で、わずかな収入しかないのと、外国人の一生を左右するだけの資源はありませんのでお断りしました。しかし、何度も日本で働きたいと希望してきました。丁度2019年11月14日から17日まで中国の桂林で「ビッグデータに関する国際会議」があり、私が基調講演者として招待された機会をとらえて、Dr. Guoに南陽から来てもらい面談しました。とても静かでまじめな研究者でした。

私が中国から帰国するとぜひ日本で地震予測の仕事をしたいと再三頼み込んできました。JESEA内部で検討した結果、1年間に限って宇宙から見た地震雲の判読方法を伝授してもらうという約束で、JESEAで共同研究を具体的に進めることにしました。2020年4月に来日する予定でしたが、新型コロナウイルス(COVID-19)が起き、来日が遅れています。

早く収束することを願い、Dr.Guoとの新しい地震予測の方法の開発を楽しみにしています。

 

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